ある日店に出てきて、「ナゼ、打ち止めにしていないのだ」と口を挟むようになった。
息子である社長は社員に対しては「言わせておけばいい」と指示していたが、体力も衰え始め介護が必要になってきた。
判定は要介護3。数字は5段階で5が一番重度だ。
では、3はどの程度かというと、一人で立ち上がったり歩いたりできない。排泄や入浴、着替えなどに全介助が必要な状況を指す。
テスト的に有料老人ホームへ入所したことがある。要介護3だが、パチンコが大好きなことだけは変わらなかった。近くのパチン店に通うほどだったが、間もなく、家に引き取った。
パチンコ好きのオーナーのために、社長は自宅にパチンコ島を作った。台数は5台で、ホールで使わなくなった台を時折入れ替えたりしている。
もちろん、還元機を付けて本格的に遊べるようにしている。
毎日、パチンコを打っている時が一番機嫌がいい。
その姿を見るにつけ、自店のお年寄りの姿を見ていると、父親の姿とダブって見えるようになってきた。
「お年寄りからはカネを取れない」と思うようになり、どうやれば、還元できるかを考えるようになった。そこで行き着いて答えが、月1回、早朝、老人だけにパチンコの無料開放を試みることだった。
開店時間は通常は9時だが、お年寄りのために7時から店を開けて、開店時間まで開放した。
ところが、回数を重ねるうちに、お年寄りから不満の声が漏れるようになった。
「勝ち負けは必要。いくら無料でも、勝っても何ももらえないのは面白くない」というようにただ、遊技するだけでは飽きてしまったのだ。
それで、無料開放は自然消滅する。
賭けマージャンは禁止されているが、マージャンを賭けないでやる人はいない。カネが動くからスリルがあるわけだ。ま、これを射幸心というのだが、若者が夢中になるゲームは、おカネがかかっていなくても面白い。
その要望に応え、お年寄り専用コーナーを作りたいところだが、今は客を差別すると行政指導をくらうので、そんなこともできない。
「ジュースの1本でも、たばこの1箱でもいいから勝った代償が欲しい」というお年寄りの声に応え、1パチコーナーは釘を甘くしている。
パチンコの果たす役割がこんなところからも見えてくる。

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