Aさんに告発資料を渡して数日後、私宛に時間を作ってほしいと連絡が来ました。
告発の件であることは、すぐ察知できました。Aさんの依頼通りの動きをし、Aさんの後ろ盾があると完全に安心していました。
ところが、約束の時間に現れたのは他の役員であるBさんでした。
狭い部屋へ行き、Bさんは私にこう切り出しました。
①証拠を見る限り、怪しい点はあるが「疑わしきは罰せず」。店長の処分は一切下さない。
②上司を告発するという行為は、社歴上初めてであり、君(私のことです)は今後危険人物とみなす。
③同一店舗内で今後仕事をすることは、お互いのためにならないので転勤して欲しい。
転勤するなら役職を一つ上げるという条件を付けてきました。
予想外の答えでした。
私が、組織を乱す情報の発信源と見なされたわけです。
上司を売り飛ばす危険人物と見なされたわけです。
100%納得できる訳はありませんでしたが、その店舗で業務を遂行することは不可能でした。自分の生活のことも考え、私は転勤を受け入れました。
転勤先の店舗にも、歪曲された情報は伝わっており、私はその後数年間「社内の危険人物」として扱われることになります。
ちなみに、Aさんからは「悪かったな」と電話が一本入ってきただけで、その後一度も顔を合わせることはありませんでした。
私はこの経験で非常に悔しい思いをしました。
何とかして見返そうとがむしゃらに仕事をしました。知識を蓄え、周囲に自分を認めさせようと努力しました。
それから数年が経過し、事件も風化してきました。社内ではある程度認められる様になってから、当時の様々なことが見えてきたのです。
実は当時、私は知る由もありませんでしたが、こんな背景が隠されていました。
①不正を働いた店長は、過去にも数回怪しい噂が立っていた人物であった。
②店長とBさんは、前の職場でも上下関係があり、Bさんが引っ張ってきた人物であった。
③AさんとBさんは、社内で派閥抗争があり、AさんはBさんラインの弱みを手柄に、社内でイニチアシブを取る思惑があった。
言葉は悪いですが、私はAさんに利用された訳です。
今から思えば、当時の私のやり方にまずかった点があったことは理解しています。
この件で、随分と会社という物を学び、大人にもなりました。
ただ、当時の私には「間違ったことを正したい」という純粋な気持ちだけしかありませんでした。
背景を読む力や、前後関係を考える柔軟な思考は持ち合わせていませんでした。まして入社直後の出来事です。
恐らく、不正に気付きながらも、様々な事情で見て見ぬふりをせざるを得ない経験をされた方も多いと思います。
それにより、人間関係や会社への忠誠心が薄れた方も多いと思います。
不正による金銭的な損失も重大な問題ですが、金の問題は金で解決できます。
しかし、その周辺で関わらざるを得なかった人達の、心の損失は解決できません。
従って、私は不正は許すべきではないと考えています。
終わり
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