ホールの現状
明日は・・・と書いたものの、正直明るくはない。それは色々な問題箇所を先送りにして、曖昧にしてきたツケが今を作り上げている。原因としてはやはり強烈なリーダーシップを取る人がこの業界にいないという事。
良くも悪くも業界の成熟期というのはリーダーがいる。プロ野球界では正力松太郎、Jリーグでは川淵キャプテンなどのように物事を一刀両断できる存在はとても大事だ。
今のパチンコ業界はこれといった人も見当たらず、巨大産業ではあるが、どこか危なかしい。様々なものが構築されているようでされてないと思う。
何がそう不安にさせるかというと、客商売でありながらあまりにも待ちの営業しかしていないホールが多すぎると思うのだ。
例えば顧客分析。遊技人口が減ったと嘆くだけで、どれだけのホールが自店の周辺人口や男女別、世代別などの簡単な事でさえも出来ていない事か・・・
来店客も、ただ頭数を数えて、周辺競合店と比べて満足しているような状況。少しだけ踏み込んでいる所もあるにはあるが、素晴らしい分析力だなぁというホールを殆ど見た事がない。そんな状況で営業戦略に活かせるわけがない。
そして対策は何かといえば『新台入替』と『イベント』。そんなありきたりな営業に遊技客は振り向いてくれない。何が顧客満足かさえも気付いてないホールがあまりにも多すぎる。
しかし、どんなに悲惨なホールでも、終日来店客がゼロというのは見た事がなく、最低限の固定客はいるものだ。そして、入替などでも瞬時は集客があるから不思議なもの。
悲しいかな、それをキッカケに集客増をという取り組みが空回りしている為、すぐに元の客数に戻ってしまう。そして又新台を買って客数を確保するという悪循環。
ホールというものはグランドオープン後、リニューアルオープン後に幾度も集客増のチャンスがある。それを感じ、見つけて適正な対処をするだけで繁盛店は出来上がる。
赤字を打ち続けても遊技客というものは減っていく事がある。この時の遊技客の心理状態というのは、一部は負ける人も必ずいるという事。
そして、もう一つは、ホールがいつまでも出し続けることはないだろうという疑心暗鬼になる人もいる。
結果、赤字から黒字への転換期が大きなギャップを生み、遊技客は離れていく。それは釘の状態やデジタルの回転数で判断していく人が多い。だから釘は大事なのだ。
赤字営業を全くやらずに繁盛店になれば、収支的には大きいがそのような所は必ず遊技客に見抜かれる。上手な赤字の打ち方というものをホール側がどれだけ理解をし、損益分岐や黒字営業への転換がその後の繁盛店を生み出す。
顧客分析に次いでホールが未成熟な部分は『チラシ』。これは広告宣伝の一部であるが、その費用対効果を分析できているホールというのが殆ど見当たらないのだ。
地域によってはサイズ制限をされたり、入替以外のイベントチラシが不可であったりするが、とにかく全国的に多くのチラシが毎日折り込まれている。
1回あたりの費用はサイズ・色・部数によって当然金額が変わるが、凡そ平均的に20万円~50万円ぐらいかけていると思われる。それが本当に効果として表れているのか?と思うのだ。
例えば1回30万円かかったとして月1回チラシを打つと、年間で360万円かかる。従業員が1人雇える費用である。酷い所になると毎週やっている所もあり、年間で1500万円近くかけている。それが10店舗のチェーン店になると1億5千万円にもなる。
チラシを打つ事と人を雇う事と、どちらが店に対して効果的かというと自分なら無限の可能性を秘めた人を雇う。そして、育てた方がどれだけホールに見返りがある事か・・・
まずもって漠然と毎回同じようなチラシを打つだけの営業戦略をやっているホールは改革しなければならない。
何故なら結果が伴っていないはずなのだ。チラシを打ったからこれだけ集客が増えました と明言できる人は殆どいないはず。
それは結局、新台効果なのかチラシ効果なのかさえ理解できてないのだ。それに対しての年間360万円はあまりにムダすぎる。
個人的には費用対効果が分析出来て次の営業に活かせるならば必要だと思うが、それが出来ないのならチラシなど全く必要ないと思っている。
何故チラシを打つのか? ターゲットは誰なのか? 何をユーザーに訴えたいのか?など目的が不明確なチラシがとても多いのだが、おそらく新台入替と同じでやらないと不安なのだろう。やる事による自己満足の世界で終わっているのだ。
よく社員研修で「入替チラシを1年間止めたら 店がどうなると思いますか?」と聞くことがある。殆どは「そんな事をすれば稼動はガタ落ちです」という返事が返ってくる。
気持ちは分からなくもないが「やった事ありますか?」と問うと「恐くて出来ません」と言う。
結局不安なのだ。
では「チラシを打って稼動が右肩上がりになっていますか?」と問うと「効果は分かりませんが横ばいです」というのが精一杯。
何故効果も分からないで、チラシを打ち続けるのだろう。不思議でならない。今の時代はチラシなど無くても、いくらでもユーザーに訴える手段がある。それだけに信用を得る事は簡単だけど、信用を無くす事もまた簡単に起こり得る。
では『チラシ』の費用対効果を分析するにはどうすればいいのか? 答えは簡単、実行は困難であるが、まず『チラシ』を回収すればよいのだ。どれだけの人がチラシを見たのか、どんな人達が見て来店してくれたのかが、すぐに分かる。
以前はチラシの隅に『粗品引換券』などとやるだけで回収も難しくはなかったけど、今は規制云々でそれも出来ないだろう。特にホール業界は物を進呈する事が出来ないだけに難しい。
ではどうすればよいのか? ということをホール従業者で話し合う事に意味がある。そうする事によって様々な方法が生み出され、営業に活かされていく事が大切なのだ。
他には、先日とあるホールがグランドオープンする際の話。ある機種を大量導入するためには機械メーカー側からその会社の『ホールコンピューター』を購入すれば大量導入が可能であると・・・
そしてある機械メーカーは、あるパチンコ台を大量導入するには、その会社の『島』を導入してくれれば可能であると・・・
このような抱き合わせ販売もどきは昔から行なわれていた。
今尚、平然と行なわれているのは、それを受け入れるホールがあるからだ。断固許しがたい行為にも関らずこのような営業手法が無くならないのはホール側にも多大な責任がある。
確かにホールはパチンコ台、スロット台がないと商売にならない。しかしいくらヒット機だからといって、そのようなことをしてまで導入する必要はないと思うのだ。ヒット機種を生み出すのはメーカーでもホールでもなく遊技客であるということを完全に忘れている気がする。
昨今、低価貸し営業をするホールが出てきた。これは100円で25玉貸し出していたものを100円で50玉貸し、100円で100玉貸しなど、1玉を4円以下の値段で貸し出すという営業手法。
単純に何故そんな事をしなくてはならないかというと、自分の考えは遊技機にあるとおもっている。時代を追うごとにパチンコは賞球数が少なくなり、戻り玉が減ったため1000円で遊べる時間が非常に短くなった。
そういった状況の中、何とか遊技客に低負担で遊んでもらおうという考えが出てきても不思議ではない。しかし低価貸しはホールにとって大きなリスクを伴う。
まず一つは機械代が以前と変わらないどころか高くなっているので入替もおいそれとできない。そしてもうひとつは店の稼動が微増ぐらいでは大幅な売上減少の為、利益が取りづらい。
事実、大半の店舗が失敗をしている。前述したリスクを十分に理解した上で、綿密な計画と営業指針がシッカリ出来ていれば成功する店舗は出てくるだろう。
遊べるパチンコという観点からすると、従来のパチンコ屋とゲームセンターの中間という位置づけになるだろうか? はてさて業界の救世主的な営業手法と成り得るだろうか?
個人的にはイベントや入替しかしない多くのホールよりは、取り組み姿勢に共感を持っているが・・・
■今後考えていくべきこと
ホールが今後考えなくてはならないのは、改めて『顧客優先』だと思う。顧客の立場に立って物事を考え、営業を考え、ゲージを考えるという事。口先だけの『顧客優先』ではなく常に実践していく事が重要だ。
ゲージひとつとっても、どうしたら儲かるゲージなのかというより、どうしたら快適に遊んでもらえるのかというゲージを構築する事。営業もどうしたら儲かるのかというより、どのような還元方法がベストなのかを最優先する。
通常の逆発想から営業に取り組んでいくと、自ずと顧客に店の姿勢というものが伝わるものである。今まではこの部分を、あまりに疎かにしてきた傾向があるので、一部のホールからでも取り組んでいけば業界は大きく変わる可能性がある。
そして、そこから先も大事なのだが、機械メーカーや関連業者、行政も含めての協力が当然必要だ。ただ大局的に考えると、見えない力というものがあるのも事実。しかし業界の将来の事を真剣に考え、取り組んでいる人は昔に比べて遥かに多い。
他力本願ではなく、黙って従うだけでなく、思う方向に行動を起こしていけるアグレッシブな業界人が、もっともっと増える事を期待している。
■最後に
このパチンコ業界は 日本人以外の多くの人が携わって日本の文化として定着してきた。どんぶり勘定から始まって、昨今のデータ分析営業になるまで数多くの紆余曲折もあった。
そこにすきま産業まで生まれて、ダークな部分も数多くあった。それを一気にクリーンな業界に、というのは不可能な話で、一点々々を解決していくしか手はない。
それに対する取り組みというものも、ようやく最近になって少しずつ表面化してきたように感じられる。個人的には悪い方向に向かっているとは思ってないし、今がまさに変革期であるとも思っている。
そして何度も述べるが この業界の様々な悪しき習慣というものを打破していかない限りパチンコ業界の未来はない。
付け刃的なことが各所に見受けられるが、まずはホールが襟を正す、姿勢を正す事から始めるべきである。
了

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