そこで店長は「期日前投票所を、うちの店でやれないだろうか」と考えた。
大型駐車場があり、バリアフリーで、立地もいい。さらに、店長のホールは割と広めの休憩室が整えられているので、ここを投票場に使えないかと思いを巡らした。
調べてみると、期日前投票所は、公職選挙法第48条の2に基づき、市区町村の選挙管理委員会が「適当と認める場所」に設置することができる。
実際に、ショッピングモール、スーパー、商業ビルなど、民間施設内に設置された前例はいくつもある。従って「民間施設だからダメ」と法律、禁止されているわけではない。
しかし、この話が現実化しない理由は、法律の条文には書かれていない部分にある。
まず、パチンコ店は風営法の対象施設であり、警察行政と切っても切れない関係にある。選挙管理委員会もまた、選挙期間中は警察と緊密に連携する立場だ。その警察が眉をひそめる施設を、わざわざ投票所に選ぶ理由はない。
次に、選挙に求められる「中立性」の問題である。選挙は公平でなければならず、同時に「そう見える」ことが極めて重要だ。パチンコ店という業態が持つ射幸性や依存症のイメージは、良くも悪くも社会に定着している。「投票所がパチンコ店」というだけで、選管は選ばない。
決定的とも言えるのが、特定事業者への利益誘導という疑念だ。投票のために来店者が増えれば、「客寄せに使っているのではないか」と言われる。実際に投票ついでにパチンコを打つかどうかは関係ない。そう見えること自体がアウトに近い。選挙とは、疑念を持たれた時点で負けなのだ。
結局のところ、このアイデアが実現しない最大の理由は極めてシンプルだ。
「できるかどうか」と「やるべきかどうか」は、まったく別だからである。
だから今日も、期日前投票所はショッピングモールにあって、パチンコ店にはない。誰もやらないのではない。誰も「やれない」と分かっているだけなのだ。
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