お盆なので、何か怖い話をしようと思いました。本当にあったお話です。あれは今から18年前の事…。閉店して何十年も経過している店舗から、使わなくなったパチンコ台を初めて買ってきた時のお話です。
当時閉店ホールの情報などあまりなく、ガソリン代をかけてはいろんな町を走って廃墟ホールを探していた。
2000年前後の遊技場名簿見たり、その住所をグーグルで検索したり。そして福島県のK町に、偶然私は辿り着いた。フラ~っと車で走ってると、そこに閉店してある小さなホールを見つけた。
シャッターが閉まっていて中に台があるのか確認出来ない。不思議な事に敷地内に一軒家がある。これも誰も住んでない。敷地に不動産の看板があり「売地」と書かれている。その不動産屋さんに電話して中に台があるのか聞いてみると、なんとそのまま台が残っていると言う。
「売ってくれませんか?」と聞いたら、捨てるのにお金がかかるから、タダでいいから持って行ってくれと引き取りの許可が出た。この電話した時が丁度お盆前で、引き取りはお盆明けの週末に来てくれと言われた。
中にどんな機種があるのか、早く見たくて、見たくてたまりません。そしてお盆明け…。管理している不動産屋さんに電話すると、当日鍵の受け渡しの時間など説明された。
そして待ちに待った引き取りの日。幼稚園の時から一緒の同級生が経営する車屋から4トントラックを借りて、廃墟に入りたがる少し変わった彼女と福島に向かった。
初めての古いパチンコ台の引き取りでテンション高くなり、向かう最中はずーっとユーロビートをガンガン鳴らして高速道路をカッ飛んで行った。
不動産屋さんが廃墟のホールの前で待っていた。
「もう一度言いますが、片付けてもらうのにお金払えませんよ?」と念入りに聞いてくる。
「大丈夫ですよ。最初は買う気だったので貰えるだけで有難いです」と言うとお店の鍵を渡してくれた。
「じゃあ宜しく御願いしますね!終わったら電話ください!」と言うと会社に戻って行った。
さあ、中に何があるのか。運命の瞬間…。鍵でシャッターを開けて中に入ると右側にスロットコーナー。スロットは1機種のみ。見てガッカリした。オリンピアの4号機ブルーマリーン14台。当時あまり値段もつかず、私自身もあまり思い入れのない台だった。
パチンコは何があるんだろう?
1機種ずつ見て行くと、「Fパワフル」、「F花札」、「Fキング」、「プリティーハート」、「夢幻伝説」、「セブンショック」。当時この中で売れ筋だったのはパワフル、花札、キングの三共の台のみ。
2026年の今となっては何でも売れる時代になったが、当時はパワフルでさえ1万5000円くらいでしか売れなかった。「ブルーマリーン」に関しては数千円にしかならない。大分ガッカリしたけど、作業に取り掛かる事にした。
私が1台1台外していく。当時の設置なのでビスではなく、釘4本で1台1台固定されてあったため、バールで釘を抜くもんだから時間がかかる。
彼女はスロット台から真鍮のメダルを抜く作業。メダルを集めて玉を島端から抜く。総台数140台の小さなホールだったが、思い出に浸ったり、丁寧に作業しているとそれなりに時間がかかった。
せっせと作業しているとすぐにお昼になったので一旦外に出た。2人で埃で黒くなった顔と鼻穴を見せあって笑っていたのを思い出す。
彼女が「それにしても何でパチンコ屋の敷地に一軒家があるんだろうね。当時凄くお金かかった家だよね」と言う。
たしかにホールの敷地に一軒家があるってのは不思議だなぁと思った。従業員の寮ならアパートタイプの建物が多い。地域によるのかな?くらいでしか考えず、お腹も空いたので近くにあったラーメン屋で顔を洗い、お昼はラーメンを食べた。
食後、廃墟に戻り、駐車場にトラックを停めて、外に出てタバコを吸っていた時の事だった。何となく敷地にある一軒家の2階を見ると人がいたように見えたのだ。
「お! 誰かいたように見えた!」と彼女に言う。
「あんたいつもそうゆう事ばかり言うよね。怖いからヤメて」と彼女は少しビビっていた。
でも女の人がこちらを見てるように見えた。気のせいかな。そして13時になるとひぐらしが鳴き始める。
私の一言で、なんか怖い雰囲気の中、作業を再開する。なかなか抜けない台もあり苦戦する。
全部外して、1人でトラックに台を積んで固定していたら、あっという間に17時。メダルも積んで玉も極力積む頃には18時。勿論、ホール内は電気なんか点かないから真っ暗。外は薄暗くなり、まだ、ひぐらしが鳴いている。
「よし。後は事務所に入って台の鍵や打ち止め札など探して帰ろう」
2人で事務所に入り、机の引出しを開けて鍵などを探す。設定帳や釘帳を見ると閉店3年前から酷い調整だった。スロットは毎日設定1か2。そんなのを見ていて、山の中にあった小さなホールの最後の仕事を終えて、何とも言えない気分になって浸っていたその時だった。ホールの入り口から事務所に歩いて来る足跡が聞こえる。
「コツン、コツン、コツン、コツン」
女性が履くハイヒールのような音。それは2人共に聞こえたのだ。
「誰か来た。不動産屋さんの人かな?」
何にも疑わず、不動産屋さんの人が来たのかと思った。作業が遅いから来たのかな? くらいに思い、私は事務所からホールに出てみると足音はピタリと止んだ。4島あった島を全部見たがそこには誰もいなかった。
めちゃめちゃ怖くなり、慌てて事務所に戻って彼女に誰もいなかった事を伝えると、彼女は顔面蒼白となり2人で震えた。
「早く出よう! 早く! 帰ろう!」
彼女は今まで見せたことのない顔してた。男の私が一緒にビビっていては情けない。強がって見せて「よし! 帰ろう、帰ろう」とひきつった顔で彼女に言うと…。今度は事務所脇(外にあった)階段を同じ足音でコン、コンと上がって行く。2人は言葉も出ず、鍵を持ってダッシュで店外へ。シャッターを閉めて鍵をかけてトラックに乗る。
「なんだったんだ。あの足音は」
彼女は早く帰ろう、帰ろうとうるさい。帰ろうとしたが、よく考えてみると1階建てのホールに何故階段があるんだ? 不思議になり、2人でその階段を上がって見る事にした。
恐る恐る階段を上がってみると、屋上には1つのプレハブがあった。
「誰かプレハブに住んでるのかな?」
2人でプレハブの中を覗いてみるとそこには誰もいなかったが、ただ私が今まで見た事も打った事もないパチンコ台が6台あった。「ユニオンジャック」(三星)だ。
もう怖くて、怖くて、両手に1台ずつ持って3往復してトラックに積んで不動産屋へ鍵を返す。担当の人があまりにも時間かかり過ぎて心配して待っていた。
鍵を返して、先程誰かホールに来たか聞いてみると誰も行ってないよとの事。そもそも不動産屋さんに女性社員がいないとの事で益々怖くなる。出来事を全部話したら担当の方が色々と話してくれた。
「多分ね、その女性の足音とはあの店の社長だと思うよ。敷地に一軒家あったでしょ? あそこに社長が住んでいたの。そして18時くらいになると社長は毎日ホールに行って、打っているお客さんとお話したりしてから事務所に行く人だったんだよ。閉店してから数年後に自宅で亡くなっていたんだよね。毎日ビシっとした恰好でハイヒール履いてたような社長さんだった。屋上に上って行った足音は、屋上にもパチンコ台があるんだよと教えてくれたんじゃないかな」
この話を聞いて2人で再び真っ青になる。
有難うございましたとお礼を言って、トラックに乗るとタイミングよく荷台から賞球が落ちて「チリーン」…。またまた怖くなり急いで帰り、倉庫に到着して台を下ろし始めた。
彼女が言った。
「もう二度とパチンコ屋の廃墟には行かない」
今まで数10軒の閉店ホールから台を買って来たが、他にもこういう話はいっぱいある。
またいつか、ぱちんこであった怖いお話が出来る機会があれば是非。
おわり
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