週刊誌記者が庶民のキャッシュレス度を取材したところ、スマホに入っている決済アプリの平均は3〜4種類。PayPay、交通系IC、クレジットカード系などが定番だという。
しかし、取材対象の中には7種類ものアプリを使い分けているという猛者もいた。その人物に「キャッシュレスが使えず困る場所は?」と尋ねると、即答で返ってきたのは「パチンコ屋」だった。
記者はその言葉に引っかかり、実際に都内のホールを取材してみた。
すると、返ってきた答えは意外なほど古風なものだった。
「ウチはキャッシュレス化は不要だと考えています。パチンコの醍醐味は現金を入れて、現金を取り戻すという行為にあります。たとえば3万円使って2万5000円戻ったとき、『5000円負けたけど健闘した』という感覚になる。ところがキャッシュレスだと、熱くなった時にいくら使ったかも分からなくなり、翌月のカード明細で後悔するだけです。現金なら『あと1万円でやめよう』という歯止めが効くんです」(都内中堅ホール幹部)
現金を介することでユーザーの自制心が働く──。その理屈には一理ある。しかし、時代が進む中で「だから現金主義を貫く」という姿勢がどこまで通用するのか。
もう一軒、別のホールはまったく逆の意見だった。
「むしろキャッシュレス化には賛成です。軍資金が尽きた時に、わざわざコンビニへお金を下ろしに行くお客様の手間を減らせます。さらに将来的にはホールの無人化が進み、少人数で運営する時代になります。キャッシュレスなら現金管理の手間も、金庫のリスクもなくなる。業務効率の面でも不可欠だと思います」
確かに、現金管理の手間は現場スタッフの負担の大きな部分を占める。売上金の搬出や両替機の補充、防犯対応などが渦巻く。
一方で、依存症の問題と対峙するパチンコ業界は、キャッシュレス化は慎重に扱われてきた。「便利になるほど依存が進む」という懸念が背景にある
実際、パチンコ専用のクレジットカードアプリはすでに開発済みだ。大阪のホールで11月からそのアプリを使ったキャッシュレス実証実験が予定されていたが、急きょ中止となった。
キャッシュレスをタブー扱いすること自体が、現実から目を背けているとも思われるが、いま、顧客の財布はスマホの中にある。現金主義を守ることで安心しているうちに、若年層の関心はますます遠のく。
依存症問題と併せて、実際には「便利さをどう制御するか」を議論すべき段階に来ている。キャッシュレス化はそこに利用制限を設けることが出来ている。
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