そもそも、なぜパチンコ店だけ酒がダメなのか?
まず、競馬や競艇、麻雀などの他の賭け事では、お酒を飲みながら遊べることが多い。負けたときの苛立ちに加え、酒が入ると暴力沙汰が心配されるのは、どのギャンブル施設でも同じだ。それならなぜ、パチンコ店だけが特別扱いされているのか?
筆者の友人が若かりし大学時代、負けに負けて激昂し、パチンコ台のガラスを拳で破壊したことがあった。真面目で温厚な性格でその後は小学校の先生になったが、当時は信じられなかった。
機械を破壊するなんて行為は、たまに起こるが、数は少ない。それなのに、パチンコ店での飲酒は禁止されたままである。もっとも、法律の根底には、パチンコは機械相手のゲームであり、負けたときのフラストレーションが機械相手にぶつけられやすい、という考えがあるのかもしれない。
コーヒーのワゴンと酒の可能性
もし、パチンコ店での飲酒が許されるようになったら、最も喜ぶのは誰だろうか?パチンコ店自身かと思いきや、実はコーヒーのワゴン販売会社が大いに期待を寄せている。かつては勝った客が周りの知り合いにコーヒーを振る舞う“文化”があった。これが売り上げが上がる一つの要因になっていた。しかし、4円パチンコの衰退と共にこの文化も衰え、ワゴン販売会社は次々と撤退していった。
もしもパチンコ店でお酒が提供されるようになれば、コーヒーの代わりにビールやおつまみをワゴンで売ることができる。酒を飲みながら遊ぶ客は自然と食欲も湧き、一人当たりの売上がグッと伸びるだろう。パチンコを打ちながら軽く一杯飲みながら焼き鳥を食べる。かなり魅力的な未来像ではないだろうか?
居酒屋代わりのパチンコ店?
さらに、飲酒が解禁されたパチンコ店が、居酒屋の競争相手になる可能性もある。仕事終わりのサラリーマンが、わざわざ居酒屋に立ち寄らず、パチンコ店でビールを片手に遊びつつ一息つける、そんなシナリオも考えられる。実際、ホール業界は長らく夜間の稼働が落ち込んでおり、この現象は特に深刻な問題だ。夜の稼働率を回復させる一手として、飲酒を可能にすることは、効果的な対策となり得る。
例えば、休憩スペースで「1000ベロセット」を提供し、一杯ひっかけた後でパチンコを楽しむ。これで夜間の来場者を増やし、稼働率を上げることができるだろう。あとは、「条例改正」という大きな壁を超えれば、夢のパチンコ&ビールの世界が待っている。
条例改正は簡単なのか?
ここで最大の難問に立ち返ろう。条例改正はどれほど難しいのか。
答えは「非常に難しい」である。条例というものは、ただの紙の上のルールではなく、社会の安定や公共の安全を守るために制定されている。特に「賭け事」と「酒」という二大リスク要素を同時に取り扱うパチンコ店での飲酒解禁となれば、行政や市民からの厳しい目が向けられることは避けられない。
さらに、実際に条例を改正するには、議会での審議や地域住民の意見を反映させる手続きが必要となる。これがすんなり通るかというと、残念ながらそう簡単にはいかないだろう。
ただ、店内飲酒に反対するのはむしろ、客や従業員側だ。負けた腹いせは景品取所の従業員にも及ぶ。シラフでも負けている時は特殊景品を投げつけたり、払い出しが少しでも遅れると暴言を吐かれたり、壁を蹴ったりと当たり散らす。これで酒が入ればもっと暴走することが懸念される。
パチンコ店での飲酒解禁は、業界の活性化に大いに寄与する可能性がある。夜間の稼働率向上や新たな売上チャンスの創出が期待できる一方で、条例改正という高いハードルが立ちはだかる。
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