このホール企業は、早くから幹部候補生制度を導入するとともに、初期段階から企業イメージの向上に努めてきた。グレーな業界とされるパチンコ業界において、コンプライアンスを遵守し、堅実な経営を続けていることが、その印象を強めている。
しかしながら、最近ではその昇進制度が裏目に出ている兆しがある。昇進までの最低滞留期間が定められており、点数評価に基づいた杓子定規な運用がなされている結果、個々の資質が軽視されがちである。企業としては能力主義の社風を醸成しようとしているのだろうが、結果的には社員の能力を削ぎ落とすような管理主義的な制度に陥っている。
本来であれば、この昇進制度により優秀な人材を育成し、出店計画に備えることが目的であった。しかし、出店計画が滞る中で、上層部のポストが埋まっており、昇進のチャンスはますます減少している。これにより、社員のモチベーションが低下し、離職を考える者が増えている。
その一例として、Aさん(32歳)はこのホール企業へ新卒で入社し、現在の役職は副主任である。厳しい昇進制度の代わりに、初任給が高いことが業界でも一目置かれていたため、Aさんは給料には不満がなかった。しかし、業界の将来に対する不安から転職を考えるようになった。
Aさんは、社員250名ほどの食品卸会社に履歴書を送り、1次面接を飛ばしていきなり社長面接を受けることになった。これは、そのホール企業のことを多少知っていた社長が、Aさんの人物像に興味を持ったためである。
面接では、まずパチンコ業界に入った理由を尋ねられた。Aさんは、「何十社も採用試験に落ちて、給料が高かったことと、接客が好きだったから」と正直に話した。また、転職についての質問には「業界の将来不安が一番大きい。社内でも転職希望者が非常に多い」と内情を明かした。
さらに、社長がAさんに興味を持ったのは、その多様な資格の数であった。大型・普通二種の自動車関係をはじめ、英検1級、マイクロソフトの認定資格、スキューバダイビングが高じて取得した潜水士など、11の資格を持っていた。これらは、遅番の日の昼間に勉強して取得したものであった。
希望する給与を聞かれた際には、「現在もらっている500万円と同程度」と答えた。これに対し、社長はその根拠として自身の能力やPRを求めたが、Aさんは十分な返答をすることができなかった。
その結果、Aさんに合格通知が届くことはなかった。せっかく英検1級を取得しているのであれば、英会話を活かせる職場を探すべきだろう。
このように、厳格な昇進制度が若手社員のキャリア形成に影響を与え、結果として企業全体の停滞を招く可能性がある。企業としては、個々の能力を正当に評価し、柔軟な昇進制度を導入することが求められる時代である。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。