元役員とはいえ、一個人としてこれほど桁外れの資産を築き上げたことに、ただただ驚くばかりだった。
岡本氏が1994年までキーエンスに勤務し、ストックオプションとして保有していた同社株が大幅に上昇したことで、この莫大な資産を形成したと報じられている。この事例は、キーエンスという企業の持つポテンシャルと、そこで働く従業員への還元がいかに大きいかを物語っている。
キーエンスという会社について改めて調べてみると、まず目に飛び込んでくるのが、社員の平均年収が2000万円を超え、日本の上場企業の中でも常にトップクラスに位置しているということだった。
同社は「ファクトリー・オートメーション」と呼ばれる分野、つまり工場の自動化に不可欠な制御機器やセンサーなどの開発・販売を主に行っている。顧客は企業であるため、一般消費者からの知名度は低いかも知れない。
しかし、その卓越した技術力とユニークなビジネス戦略によって、FA業界では揺るぎない地位を確立している。
このキーエンスのビジネスモデルから、特にパチンコ業界が学び取るべき点は多々ある。それは単に「良い商品を売る」という次元に留まらず、顧客企業が「いかにコストダウンを実現し、利益を向上できるか」という、極めて具体的な「価値」を提供している点にある。
キーエンスの商品は、粗利率8割を目安として開発・販売されている。これは例えば、原価が20万円の商品を100万円で販売することを意味する。
キーエンスの営業マンは、顧客が抱える課題に対し、緻密なコンサルティングを行う。例えば、「現状、ある製造工程に100時間かかっているとしたら、当社の製品を導入することで、それを50時間にまで短縮できる」と具体的に提示する。そして、「短縮された時間で浮く人件費や、向上する稼働率を計算すれば、初期投資として100万円を支払ったとしても、十分なリターンが見込める」と論理的に説明する。
つまり、顧客企業の業績が実際に「儲かる」ことをデータに基づいて証明することで、顧客の購買意欲は「買ってあげる」から「今すぐに持って来て」と変化する。
この営業手法は、パチンコ業界の遊技機メーカーの営業にも共通する部分があるかもしれない。
「この機種を導入すれば、どれくらいホールが儲かるか」という説明までは同様に行われるだろう。
しかし、パチンコ業界で「ホールが儲かる」ということは、その裏返しとして「ユーザーの懐を痛めている」という側面が常に付きまとう。これが、社会的な批判や業界全体のイメージダウンに繋がる問題でもある。
日報のコメントには「業界が、出玉で生活を養う者を増やさなかった結果が今の惨状」という指摘がある。これは、持続可能な業界発展を阻害していることへの警鐘でもあろう。
もしキーエンスが遊技機を開発したとしたら、どのようなものが生まれるだろうか。彼らの「顧客の課題解決」に徹底的に寄り添う姿勢は、ユーザー側にもメリットを還元するような、まさに「別次元」の遊技機を生み出すかもしれない。
単に「射幸性を煽る」のではなく、遊技体験の面白さを高め、ユーザーが安心して楽しめる、新たな価値提供の形を模索するだろう。
パチンコ業界は、最終的なエンドユーザーである遊技客によって成り立っているにも関わらず、メーカーにとっては直接の顧客がホールであるため、売上を上げることに直結する「射幸性を上げる」ことに血道を上げてきた歴史がある。
しかし、持続的な成長と社会に受け入れられるためには、キーエンスのような「エンドユーザーへの真の価値提供」という視点から、ビジネスモデル全体を見つめ直す時期に来ているのである。
パチンコ業界が本当に学ぶべきことは、ホールとユーザー双方がwin winになる発想なのである。
※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。