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食事難民が生んだホールの外食産業進出_

高稼働を誇る郊外型ホールには、あえて飲食コーナーが設けられていなかった。理由はホールの隣に町中華の名店があり、食事の需要はすべてそこで賄えていたからだ。客は腹が減れば食事休憩を取り、ラーメンやチャーハンをかき込む。それが長年、当たり前の風景だった。

ところが、その当たり前は突然終わりを迎える。店主の高齢化を理由に、町中華が店を畳んでしまったのだ。すると、ホールの客たちは一転して食事難民となった。最寄りのコンビニは徒歩圏外。空腹を我慢するか、遠出するかの二択を迫られ、遊技時間が削られていく。

この状況を放置すれば稼働に響く。ホール側が打ち出した応急処置は、弁当屋からの仕入れ販売だった。業者と契約し、日替わり弁当を用意。電子レンジも設置し、温めて食べられる環境を整えた。

すると、予想をはるかに超える反応が返ってきた。

多い日には1日100食以上。昼どきには弁当を求めて列ができるほどだった。ホールとしてはあくまで「サービス」の位置づけで、利益はほぼゼロ。店から離れない効果はあった。

しかし、数字は人の心に欲を湧かせる。
「これだけ出るなら、自前でやった方が儲かるのではないか」
そんな声が自然と上がり始めた。

そこで次に打ち出されたのが、景品交換による簡易飲食だった。レトルトカレーとパックご飯をセットにし、紙皿とスプーンを添えて75玉・15枚、つまり300円相当で提供。

火を使わず、オペレーションも簡単。売れる日は40食分が捌けた。その分、弁当の販売数は減った。

この成功体験が、オーナーの中に新たな欲を芽生えさせる。

閉店した町中華の店舗がそのまま残っていた。

「いっそ、ちゃんとした店をやればいいのではないか」

居抜きで買い取り、料理人を雇えばすぐにでも再開できる。設備投資も最小限で済む。頭の中では、ホール客だけでなく、一般客も期待できた。

しかし、飲食業は片手間で成功するほど甘くはない。

弁当やレトルトで済んでいた時とは違い、味、衛生、人材、原価管理――課題は一気に増える。

「客の空腹」をチャンスと捉え、弁当から景品へ、そして店舗買収から実店舗運営へと、わずかな期間でシフトチェンジするオーナー。弁当100食が火をつけたこの挑戦が副業の柱になるのか。静かに見守りたい。



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