常連客は60代で、仮にAさんとしよう。
風呂を上がって夕食時間にレストランでAさんと再び遭遇する。しかし、ここで店長は見てはいけないものを見てしまった。いつもホールに一緒に来ている奥さんではなかったからだ。奥さんは40代、この女性も40代に見えるが、奥さんではない。
店長の頭の中には「不倫」「浮気」の文字が交錯した。
しかし、Aさんは堂々とした態度で接しており、店長に見られても密会している雰囲気は微塵もなかった。
店長は見てはいけないものを見てしまった、とばかりにそこでは敢えて会話はしなかった。
後日、Aさんがホールに来た時、店長は思い切って聞いてみた。
「温泉に一緒にいた女性はどなたなんですか?」
「ありゃ、娘だよ」
今の奥さんとどう見ても同世代に見えるので、娘にしては歳が合わない。
「最初の嫁とは死別で、その時の娘だ」
最近、娘が離婚したので、慰めるために温泉に連れて行ったことを明かした。
てっきり、不倫旅行かと詮索していた。これで合点がいったが、店長は再び驚かされる。
「今の嫁は娘の高校の時の同級生さ」
時は少し流れる。
Aさんは結果的には娘の同級生だった奥さんとは別れることになり、一緒にホールへ来ることもなくなった。
ところが、別れた奥さんの会員カードがデータ的にも使われていることに店長は気づいた。
Aさんはこのホールの常連客と再婚していた。それで元嫁の会員カードを今の奥さんに使わせていたのだが、三度、店長は驚く。
再婚相手の常連客は、御年79歳のおばあちゃんだった。
なぜ、そんなおばあちゃんと再婚することになったのか、店長も興味津々だ。
「おばあちゃんは凄い資産家で、独り者。旦那さんも子供も死んで誰も面倒を見てもらう人がいない。面倒を見てくれないかと相談を受けるうちに情が移り、一線を越えてしまったよ」
おばあちゃんは山を持っているほか、田んぼだった土地を大型ショッピングセンターに貸していた。賃料だけでも毎月200万円も入ってきている。
面倒を見てくれるのなら、全部相続させる条件をおばあちゃんが提示したために、再婚に至った。
娘の同級生の後は、母親の年齢以上の相手と結婚するなんて小説の世界でもそうそうない。
ドキュメント72時間ではないが、パチンコホールに集う人たちにはそれぞれの人生がある。

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