業績は悪くはなかった。オーナーはもう10年契約を延長して営業を続ける予定だった。地主との契約交渉では地代の値上げにも応じるつもりでいた。もちろん、地代の支払いが滞ったことは一度たりともなかった。
ところが、地主側はこの先業界が10年も持たないことを銀行筋から吹聴されていた。貸すならもっと固い業種と考えたようだ。
契約が満了すると、オーナーは地主に建物の買取を請求することはできない。ホールを取り壊し、更地にして地主に返さなければならない。
インバウンド客で賑わう大阪の繁華街ホールは、テナントで入っていたが、契約更新時に家賃でドラッグストアーに負けて撤退を余儀なくされたケースもあった。
10年前、ホールが提示した家賃よりもドラッグストアーの方が高い金額が支払える時代が来ることを誰が想像できたであろうか。
この10年で4円が衰退した結果である。
1パチや5スロの次は50銭、20銭パチ、2スロとレートをどんどん下げているホールも増えてきているが、1円より下のレートを始めるともうデフレは止まらない。お客はどんどん安いレートへと流れて行く。終焉のカウントダウンでもある。
既存客向けには1円死守だろうが、新規客開拓には4円で遊べる機械作りだ。既存客でも4円で遊べる機械を作れば、わざわざ1円コーナーを作る必要がない。
そこで必要になってくる発想は1000円スタートからの脱却である。液晶を使うから液晶を回すためにスタートが必要になる。
セブン機が登場する以前は電役物の全盛期でもあった。チューリップが盤面一杯に散りばめられ、特定の入賞口に入るとチューリップが全開して、何秒間か開いたまま、という機種もあったこの手の台は単純明快で初心者でもすぐに遊び方が分かる。玉が出たり、飲み込まれたりの繰り返しで、徐々に玉を増やしていく。
これこそが本来のパチンコの姿だった。版権も不要で映像を作るコストも不要なので、機械代の製造原価も大幅に落とせる。それが面白い機械であれば、製造原価に見合った値段でなくてもホールは買う。
「3段クルーン物は最後のクルーンまで行かないと大当たりにならないが、1段目は小当たり、2段目は中当たりの穴を設けるなどの工夫をすれば、一発系が嫌いな初心者でも取り込めるはず」(メーカー関係者)
1000円=250発で十分遊べて(玉がなかなか減らない)、スリルがある電役機を作れば4円だって復活する、というものだ。
確かに今いるお客さんは大量出玉を求めるが、玉を出すためにはその分吸い込みが必要だ。新規客を開拓するには「1000円でいかに遊そばせるか」に発想を変えないと業界は縮小の一途を辿るばかりだ。

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