ほめ達認定講師の筒井俊博さんは、ソフトウエアの開発に携わっている。自らの仕事を通して、うまく行くプロジェクトとそうではないプロジェクトの違いにある日気づいた。
それはコミュニケーションの差だということに。モノづくりを通してヒトづくりの重要性に気づいた。
部下を褒められずに困っている上司がいる。
まず、どこを褒めていいのか分からない。同じミスを繰り返し、叱れば辞める。ということで、どうすればいいか悩んでいる中間管理職は少なくない。
ほめ達協会の西村貴好理事長は、元々は覆面調査の会社を経営していた。一般客にまぎれて接客調査・報告を業務としていた。
当初は改善点ばかりをレポートしていた。いわゆるダメ出しの達人だったが、それでは全体の改善につながらず、あまりいい成果が出なかった。
そこで発想の転換を行った。
直す箇所は2~3点に絞り、それ以外は褒めることをレポートに上げた。褒めることをメインに報告し始めると効果が上がり、成果が出るようになった。色々な業態でも成果が上がるようになったことから、ほめ達を設立するに至った。
褒めて育てる。
褒めるということは、甘やかすというマイナスイメージがある。
「ほめ達」とは、目の前の人やモノ、仕事で言えば商品やサービス、起きる出来事などに独自の切り口で価値を見つけ出す「価値発見の達人」のことだ。
ここでキーワードとなるのが3S+1。
Sからはじまる
・すごい
・さすが
・すばらしい
日本人はおくゆかしくて3Sはめったに使わないが、3Sを口癖にすることがほめ達の第一歩である。
+1=そうくるか
方向性は間違っていても全否定はしない。やっている努力を認めることで「そうくるか」と付け加える。
この一言は自分ならではの発想をしていることを認められたことがうれしくなり、やり直しも前向きに取り組みやすくなる。
改善につながる言葉が3S+1である。
筒井さんにはソフトウエア開発時代に今でも忘れられない思い出がある。
筒井さんは組み込み系のソフトウエア開発のために、客先に常駐型で勤務していた。上司は週一でやって来て、懸念事項は進捗会議で行う。
問題解決策を巡り方針の違いで上司から「お前はバカか!」と皆の前でズバッと言われた。
筒井さんは頭の中が真っ白になった。心が折れることを実感した瞬間だった。
この件があって以降は、上司に会うのが怖くなり、ビクビクするようになり、うつ状態の一歩手前まで行った。
そんな時に目にしたのがほめ達の新聞コラムだった。これを読んだ瞬間、自分の求めていたことを見つけた思いになり、認定講師になる。
上司は技術的にはピカ一だった。部下に対しては「いや」と否定から入るタイプだった。
その上司に筒井さんは褒められたかった、ということに認定講師になって気づいた。
褒めるとは価値を発見して伝えることである。
関係性が出来上がっていない時は、傷つけられた上司に筒井さんは何も伝えていなかった。
例えば、「(上司の)アドバイス通りにやったら、客先からも褒められました」ということを上司に報告もしなかった。
上司にも上司の価値を伝えていれば、上司を救うこともできた。
人はただ誉め言葉が欲しいのではなく、誰かの役に立っていることを知りたい。
ほめ達は叱ることは否定しない。それは相手の成長の可能性を信じているからだ。時には「あなたらしくない。才能の出し惜しみをするな」と相手の心に届くように叱る。
褒めるために必要なことは、褒めるために相手を観察する、相手に関心を持つことである。愛する、の反対は憎しみではなく、無関心になることだ。
成果を引き出すほめ達は経営資源の最大限の活用になる。
これからのリーダーに求められることは、心の報酬を与え、成長と貢献を実感することだ。「あなたのおかげなんだよ」と実感して伝えることで、部下のモチベーションアップにつながる。

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