この運び屋のアルバイトしている20代の若者がいる。これまで4~5回は運んでいるらしい。ちょっと旅行までして小遣いまでもらえる、という軽い気持ちでやっている。罪悪感はない。
運び屋専用の靴も開発済みで、隠し場所は靴底。500gずつを靴に忍ばせて1Kgを運ぶ。1kgは現在の相場で約500万円。
運び屋の小遣いを何に使っているか? それはスロット代だった。あぶく銭は所詮、あぶく銭である。
この話を聞いたホール店長は複雑な気持ちになった。最近、「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」の研修を受講したばかりだったので、余計そういう気持ちが湧いた。
依存症対策の一環で始まったこのアドバイザー制度の役割は、依存問題に悩む本人や、その家族からの相談等を受け付ける窓口相談員で、ホールに1人以上配置することを目指している。
「犯罪に加担して稼いだおカネがホールで使われることも、見て見ぬふり。依存症がなくなったら業界は潰れてしまう、というのが本音です。研修を受けてからというもの、業界が嫌になってきました」
現在、42歳の店長の年収は1000万円以上。こうした高額の年収は依存症の人や犯罪から得たおカネが使われていることで成り立っていると思えば、思うほど自己矛盾を感じてきた。
今までは稼働を上げるために色々な方策を打ち出してきたが、稼働を上げることは依存症を増やしているように思えてきて、それすらも虚しく感じてきた。
「私自身、こうなるともう偽善者ですよ。昔の時間打ち時代は、お客さんにたっぷり玉を出して帰ってもらいたいと思っていましたが、等価になってからは、出し過ぎると平気ではいられません」
アドバイザーの研修を受けたら、この店長と同じようなことを考える業界人が増えて行くことは間違いない。
では、今後とも店長が胸を張って働けるようにするには、どうすべきか? 日報で何度か書いているがやはりパチンコの存在意義だろう。
ホールは立地の良さから「便利」を追求することもその一つだろう。コンビニのようにホールにしかできない「便利」を提供できるようになれば、ホールの存在意義もぐっと増す。
さらには、換金がなくても業界がやっていけるビジネスモデルを新たに構築することも必要だろう。これで業界のイメージはグッと変わる。換金がなければ依存症も減るだろう。

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