一方、スロットは釘調整が不可能であるため、設定によって出玉率を管理する仕組みなので、極端な粗利構造にはなりにくい。つまり、スロットは「設定」の範囲内でしか収益を調整できず、一定のバランスが保たれている。これに対してパチンコは、「釘調整」によって設定1を下回るような極端に回らない台を作ることが簡単にできる。その結果、ホールはパチンコで粗利を簡単に取れる方向に偏り、遊技としての魅力やユーザーの満足度は後回しにされてきた。
このような収益至上主義の運営が長期的に続いたことにより、ユーザーは「勝てない」「楽しめない」と感じ、離反していった。それにも関わらず、業界全体としてこの根本的な問題を改善する動きは乏しい。これこそが、パチンコ復活を阻む最大のジレンマである。
さらに、近年注目されているインバウンド需要に対しても、パチンコ業界は十分に対応できていない。その背景には、パチンコの現状が外国人観光客に勧められるような商品ではない、という業界人の“良心”とも言える葛藤が存在するのではないか。
例えば、大阪・ナンバ周辺の飲食店は、英語や中国語・韓国語など多言語の看板やメニューを用意し、インバウンド客の取り込みに積極的である。これは美味しいものを提供している自信の表れでもある。
これに対し、千日前のホールは、一部で店頭に多言語のガイドブックを置く程度に留まり、実質的には外国人の利用を歓迎する姿勢に乏しい。
一方で、同じくインバウンド客に人気の射的場は、至ってシンプルなルールなので、外国人観光客が気軽に参加し、楽しんでいる。景品を狙い、当てて落とすという単純明快な構造が、言語や文化を超えて通用しているのである。
これに比べ、今のパチンコは日本人の初心者ですら仕組みを理解するのに時間を要するほど複雑化している。ましてや外国人にとっては、遊技方法はもちろん、景品交換の仕組みまで含めて非常に分かりにくい。これではインバウンド需要の取り込みどころか、初見客に対する障壁となっている。
数年前、ベトナムで普通機専用のパチンコ店がオープンした例もあったが、これは失敗に終わった。あまりにも射幸性が乏しかった。もしこのとき、ハネモノの分かりやすい遊技機を採用していれば、状況は違っていたかもしれない。射幸性とゲーム性の両立が図れ、外国人にも「遊技」としての楽しさを直感的に理解させることが可能だったはずである。
インバウンドをホールに呼び込むためには、まずはホール側の営業スタンスそのものを見直す必要がある。つまり、釘によって簡単にボッタクリができる仕組みを廃し、ユーザーに対して明確で公平な遊技環境を提供することが重要である。
インバウンド専用はハネモノ専門店がピッタリかも知れない。

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