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届かなかった“ワクワク感”。業界総力戦の限界

先の参議院選挙で、パチンコ業界が満を持して送り出した自民党公認候補・阿部やすひさ氏が、全国比例区に出馬するも、得票数は8万8368票にとどまり落選した。業界団体がかつてないほど一致団結し、業界挙げての“総力戦”に打って出たが、議席獲得には至らなかった。

阿部氏は、「くらしに安全・笑顔 ワクワク感を」というキャッチフレーズを掲げ、パチンコ店が地域社会にもたらす安心感や安全を前面に押し出した。


しかし、この言葉は業界内部では共感を呼んでも、一般有権者に対しては抽象的すぎたのか、その意図が伝わりきらなかった。比例代表選挙は全国民が投票対象となる広いステージだ。そこでは、より普遍的な課題への訴求が求められる。

業界は今回、前例のないほど組織的に動いた。業界団体が推薦団体を取りまとめ、ホールには支援ポスターが貼られ、従業員への投票依頼も徹底された。業界誌・業界SNSでも連日支援の呼びかけが行われ、「今回は本気で議席を取りにいく」という空気が漂っていた。だが、その総力戦の結果が9万票にも届かなかったという事実は、業界内部に重くのしかかっている。

思い起こされるのは、3年前の2022年参院選だ。業界が推した元参議院議員の木村よしお氏が再選を目指して出馬した際の得票数は11万3943票。結果的に落選ではあったが、阿部氏よりも2万5000票以上多くを集めた。木村氏は、業界が今回ほど結束していたわけではなかったが、それでも一定の票を得たのは、パチンコ業界以外の基礎票を持っていたことに加え、より社会的なテーマで訴求していたことが一因とみられる。

パチンコ店の存在感が「災害が起こった時に建物も強固なホールが逃げ込める場にもなる。景品や飲料水で1~2日は命がつなげる。日本全国にパチンコ店を残すことが国民の安心・安全につながる。パチンコ店があって良かったね、と言われる環境を作る」と業界内向きの視点にとどまってしまった。

阿部氏は実直で現場感覚に優れた人物として業界内での信頼も厚かった。業界から議員を出すという初めての挑戦ながら最後の切り札でもあった。いわば、1番バッターで様子見ではなく、いきなり4番バッターを登場させた。

今回は業界の組織力が問われる結果となった。選挙公約は国民に刺さるものではないのだから、後は組織力でカバーするしかなかった。

パチンコ業界の就労人口30万人あまりが全員投票していれば当選していたが、そんなことはあり得ない。上層部がどれだけ熱量を持っても末端のアルバイトにまで刺さるものが不足していた。

それでも、今回の選挙戦はひとつの成果も残した。業界が一致団結して一つの目標に向かって動いたという事実は、今後の政治関与の基盤となる。

ただし、その方向性には大きな修正が求められる。もはや「業界の代表を国会に送る」だけでは足りない。業界を通じて社会にどう貢献できるのか、業界の課題が社会の課題として共有されるにはどうすればよいのか。政治と有権者の間に立つ「翻訳者」としての機能が、候補者にも、業界にも求められている。

阿部氏が掲げた「ワクワク感」は、パチンコという娯楽に携わる人々にとっては共感できるものだったかもしれない。しかし、広く国民に響かせるには、その言葉に具体的な意味と社会的文脈が必要だった。今回の落選は、その欠如が結果として突きつけられた選挙であり、同時に業界にとって次の一手を考えさせられる結果となった。

追記

社員・アルバイトを含め100人規模のホールでは、社長の号令一下で参院選の投票を指示した。その結果、60%が投票に行った。

では、何%が阿部氏に投票したかというと22%だった。業界の流れから90%以上が阿部氏に投票してもおかしくないが、阿部氏に投票しなかった理由は「野党が公約していた減税問題に共感した」というのが大半を占めた。

これが業界の末端にまで浸透していなかったために、票が思ったほど伸びなかった現実でもあろう。

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