1カ月の試用期間を無事に終え、正社員に登用された。無遅刻・無欠勤。新卒で入社したのが大手ホールだったこともあり、基本的なホール業務は一通り身についている。接客態度も丁寧で、即戦力として現場の評価は高かった。
ところが、3カ月ほど経った頃から、店長はある行動に違和感を覚えるようになった。更衣室で、彼がロッカーの鍵を何度も何度も確認している姿を目にしたのだ。一度閉めては確認し、また触っては確認する。その回数は常軌を逸していた。
その“癖”は、やがて表周りの業務にも現れた。台トラブルでドアを開け、対応が終わって閉める。通常なら鍵がかかったかどうかの確認は1〜2回で十分だ。しかし彼は、20回以上も繰り返し確認し続けた。その様子に客は呆れ、当然のようにクレームが入った。
こうした事態が数回続き、店長は頭を抱えた。能力や勤務態度に問題があるわけではない。しかし、このままでは明らかにクレームの火種となる。
鍵を何度も確認する行為は、強迫性障害の代表的な症状の一つである「確認強迫」に該当する。店長が理由を尋ねると、彼はぽつりと打ち明けた。最初に入社した大手ホールで、台のドアが完全に閉まっていなかったことがあり、その際、上司から激しく叱責された。その経験が強烈なトラウマとして残っているのだという。
店長は理解しながらも、現実的な判断を迫られた。現状では、表周りに出すことはできない。女性社員であればカウンター業務への配置転換という選択肢もあるが、男性社員の場合、受け皿は限られる。処遇に悩まざるを得なかった。
対処法としては、「確認は1回、もしくは2回まで」と明確な上限を設定し、行動を段階的に制限していく方法と、精神科や心療内科での治療を並行して行うことが、最も確実とされている。
問題は、本人の努力だけでは解決できないケースがあるという現実だ。ホール現場はミスが許されない環境であるがゆえに、過去の叱責が心の傷となり、別の問題を生み出すこともある。優秀であるがゆえに起きた、この“歪み”を、組織としてどう受け止めるのか。現場の管理職には、難しい判断が突きつけられている。
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