午前中なら「今日、朝食は食べましたか?」、午後なら「今日、昼食は食べましたか?」。あいさつ代わりの世間話のようで、答えは「はい」か「いいえ」で済む、実に他愛もない問いだ。ところが、この質問には、ホール側の意図が巧妙に隠されている。
「食べました」「まだです」と、聞かれたことだけに答えれば問題なし。
ところが「ラーメンでした」「カレーを食べました」など、具体的な内容まで語った瞬間、その応募者は「要注意人物」としてのレッテルが貼られる。
理由はこうだ。
余計なことを話す人間は、余計なことを漏らす。つまり、設定漏洩予備軍というわけだ。
確かに、設定漏洩はパチンコ業界にとって死活問題だ。過去に何度もトラブルを起こし、信用失墜を招いてきた。採用段階で慎重になる気持ちは分かる。
しかし、朝食の話題で口の軽さを推し量ろうとする発想は、あまりに短絡的だ。そもそも、設定漏洩は「うっかり喋る性格」だけで起きるものではない。
情報に触れられる人間が多すぎる、権限管理が甘い、内部監査が機能していないなど、原因の多くは、個人ではなく組織設計の欠陥にある。そこを改善せずに、「よけいな一言を言ったから危ない人材」と決めつけるのは、リスク管理を人間の性格に丸投げしているに等しい。強いて言うなら、仕組みを作れない側の責任逃れだ。
実際、システムで設定情報を遮断し、触れる人間を極端に限定し、ログで管理するホール企業も存在する。そうした企業では、面接で朝食の話など聞く必要すらない。
人手不足が深刻化し、即戦力が求められるこの時代に、こんな心理テストもどきで人材を落としていく余裕が本当にあるのだろうか。
口数が多い人材は、同時に接客力や現場対応力に優れている可能性も高い。それを最初から切り捨てるのは、あまりにももったいない。
設定漏洩を防ぎたいなら、まず疑うべきは応募者ではなく、自社の管理体制だろう。
朝食の中身より、情報の流れを点検すべきではないだろうか。
「ラーメンを食べました」と答えただけで不採用になる業界。その感覚こそが、業界が抱える最大の時代遅れリスクなのかもしれない。
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ピンバック: 金森鉄