さらに、トイレには予備のトイレットペーパーを複数個、常にストックしていた。個別包装された美しいロールが棚に並ぶ様は、清潔感とともに“また来たい”と思わせる雰囲気を醸し出していた。
しかし、そんなある日から、予備のトイレットペーパーが異常なペースで減っていくという現象が発生するようになった。
最初のうちは清掃スタッフの補充ミスか、あるいは一時的な来店客の増加による消費かと思われた。しかし、連日続くこの不可解な現象に、ホール側は異変を察知するようになった。トイレットペーパーの消費量と来店者数とのバランスが明らかに合わないのだ。明らかに“何か”がおかしい。
そこでホールは、ついに「盗難が起きている」と確信するに至った。そして、対策として選んだのがエアタグでの追跡だった。これは、紛失防止タグとして広く用いられているもので、iPhoneなどと連携することで、位置情報を追跡できるという優れた機能を備えていた。
幸い、ホールが採用していた高級トイレットペーパーは、個別に美しく包装されていたため、その中にエアタグを忍ばせることは簡単だった。スタッフは慎重に数個のロールへタグを仕込み、トイレの棚へ戻した。
数日後、AirTagの通知が作動した。トイレットペーパーが、ホールから500メートルほど離れた住宅街の一角にある一軒家へと移動していた。追跡の末、驚くべきことに、そこに住んでいたのは常連客として長年ホールに通っていた84歳のおばあちゃんだった。
後日、おばあちゃんが来店した際、スタッフが丁寧に事情を説明した。「トイレットペーパーをGPSで追跡した結果、あなたのご自宅にあることが分かりました」と告げると、おばあちゃんはきょとんとした表情を浮かべた。話の内容がうまく伝わっていない様子で、何度か同じ説明をしても理解が追いつかない。会話の中で、スタッフは「軽度の認知症の可能性があるのではないか」と感じざるを得なかった。
スタッフはこの件をホールオーナーに報告し、対応を相談した。するとオーナーは、「長年通ってくれている大切な常連客だ」と語り、今回は警察沙汰にもせず、不問に付すという決断を下した。
高級品は盗難トラブルのリスクが高いため、女子トイレのトイレットペーパーは、今後は一般的なものへと切り替えることにした。
今回の件から得られた教訓は、社会問題にもなっている認知機能の低下や生活困窮による高齢者の万引き事案が増えていることが、ホールへも波及していることだった。
対策としてはトイレ内に「持ち出しはご遠慮ください」といった張り紙で注意を促すぐらいのことしかできない。

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簡単に盗めるかもと思わせるのがダメ、スーパーの完全セルフレジが良い例です(万引き増やすだけですよ、あれ)
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私的に違和感を感じるのはこの部分( ´Д`)?
店長飛び越してスタッフさんからオーナー(^_^;)?
んで先日のエントリーの総付け景品の冷えたオシボリと言い今回のトイレットペーパーと言い、んなショーも無い事にいちいち首を突っ込むオーナーって一体なんなんでしょ(´д`)?
などと私は感じてしまうのですよ…
(オシボリさんは既に引退&入院中だったかしら?)
んなモン普通に考えて現場のスタッフさん達で処理する事で有ってトップなら他にヤラなきゃならん事が山積みでしょ(/´Д`)/
いちいちそんな程度の事案を報告されたり指示を仰がれたりしたら怒りますよ(^_^;)
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