そもそもパチンコが依存症問題の標的とされたのは、2014年に厚労省(国立病院機構久里浜医療センターの研究グループ)が発表した536万人、という日本のギャンブル依存症の人数だった。しかも、このうち8割の430万人がパチンコの依存症と指摘された。当時の遊技人口が1000万人として、その半分が依存症と言うのも乱暴な話だ。
IRカジノ法案に反対する議員や政党の多くは、この536万人を政争の道具に、「これ以上依存症を増やすカジノは日本にはいらない」と猛反対した。
それから3年後の2017年3月に発表した厚労省の数字では、280万人に半減した。
どうして急激に減ったかと言うと前回が4000人にアンケート調査だったのに、対して今回は1000人に面談調査である。しかも前回は生涯を通じて依存症が疑われた人もカウントされていた。随分杜撰な数字に皆が踊らされた。
厚労省と言えば、国の基幹統計である「毎月勤労統計」だけでなく、同じく基幹の「賃金構造基本統計」でも不適切な調査が相次いで発覚しているだけに、厚労省が発表する数字自体が信用ならない。
人を動かすための3大要素は、「論理」「感情」「信頼」であり、「論理」を構成し「感情」に火をつけ「信頼」を増すことが出来るのは、数字だ。メディアが世論をミスリードする時にも、この数字というものが非常に役立つ。
信頼性が増す数字をパチンコ業界も宣伝用に使った。
パチンコ全盛期の頃は30兆円産業と喧伝され、業界も有頂天になっていた時代があったことは事実だ。社会的地位が低かったパチンコ業界を大きく見せるためにも業界は貸し玉料を売り上げとして計上するグロス会計を否定する声などなかった。
他業種からパチンコ業界に転職した人材教育会社の代表は、90年代の業界をこう述懐する。
「パチンコ業界へプレゼン資料を作る時に、電話帳ほどの分厚い資料を読み込んでいる時に、30兆円産業と3000万人ファンという規模の大きさに物凄く驚きました。当時、トヨタ、日産などの自動車メーカーをクライアントに持っていましたが、当時の国内の自動車産業の国内市場規模が21兆円です。業界人はその数字に驚きませんでしたが、外から入ってくる人間には30兆円はとんでもないサイズです。本当に腰が抜けるぐらい衝撃的な数字でした」
業界人が驚かないのは中身のない数字だからだが、外部の人間にすれば額面通りに受け取る。
貸し玉料金でカウントするグロス会計は、例えば、1万円使って1万円勝った客がまた1万円使って1万円負けた。お客も店も±0だが、売り上げは2万円が計上される。簡単な説明であるが、貸し玉料金による売り上げは、中身のない水ぶくれの数字である。
世界のカジノやダイナムが採用しているネット会計(売り上げ-払い戻し金)こそがギャンブル産業の世界基準であり、ミニギャンブルのパチンコもそれに倣うべきだろう。

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