皮切りは2000年の九州・沖縄サミットだった。警察が警備業務などで手一杯になっている時期にホールの申請業務を減らして、警察業務を後方支援する目的で始められ、2002年日韓ワールドカップ、2008年洞爺湖サミット、2010年APEC、2016年伊勢志摩サミットなどでもホールは1カ月間ほどの新台入れ替えを自粛してきた。
これまでの慣例に従えば、今年から来年にかけて入れ替え自粛をしなければならないビッグイベントが控えている。
6月28日~29日 G20大阪サミット
9月20日~11月2日 ラグビーワールドカップ2019
2020年7月24日~9月6日 2020東京オリンピック/パラリンピック
昨年9月21日に開かれた全日遊連の理事会で阿部理事長は、2019年度中の入れ替え自粛については、「予定していない」との見解を示していた。理由は業界が非常に厳しい立場に置かれているからとした上で、「行政からの要請があれば協力する」とも述べている。
阿部理事長の見解を代弁するように現場からは早くも悲鳴が上がっている。
「ライターイベントなども事実上禁止になり、集客手段は今や新台入れ替えしかない。新台入れ替えするとやはりお客さんは増える。オリンピックは3カ月とも5カ月とも自粛期間があるのではないか、という情報だけが独り歩きしている。3カ月以上も新台入れ替えができないと本当にお客さんは来なくなる。オリンピック期間中はファン感謝デーのようなことをすることになるんでしょうかね…。組合で早く見解を示して欲しい」(都内ホール関係者)と不安を募らせる。
その一方で「機械入れ替え自粛大賛成。無用に新台入れ替え競争しなくて済む」という声があることも事実。新台を入れ替えることができないのは、同じ条件だから、機械を買わない分、機械代コストの削減につながる。
新台入れ替えを奪われて集客に困る以上にメーカーの方も自粛期間は痛手だ。
2010年のAPECの自粛期間のあおりを受けたのはパチンコメーカーに部品を供給するメーカーだ。当初の計画ではパチンコの出荷台数を380万台と想定していたため、部品の出荷個数は245万個を見積もっていた。
それが、160万個、142万個と下方修正する中で、最終実績が132万個に落ち着いた。売上げ予測も150億円から81億円と激しい落ち込みである。
2016年5月の伊勢志摩サミットの入れ替え自粛では、同年5月末のパチンコの販売台数が58万1671台に止まった。2015年5月末が80万8520台だったことを比較すればその差は一目瞭然。-22万6849台も減っている。
「ある大手メーカーがオリンピック期間の販売自粛を想定して、15%の粗利が下がると予測していますが、中堅メーカーだともっと下がるのではないでしょうか。部品メーカーにも当然影響がでます」(経済アナリスト)
メーカーは自粛期間を想定して販売計画を行う。12カ月を例えば、自粛期間のトータルが4カ月とすれば、それを差し引いた8カ月分で補えるように販売計画を練る。しかもお互いのビッグタイトルの販売時期が重ならないように調整することになるが、ホールがどこまで付き合ってくれるかが問題だ。

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