1機種で何十万台も売れた時代は、新卒でも夏のボーナスが100万円、というメーカーもあったが、それも今は昔。今は1万台完売できれば御の字。機械が売れなくなればそんなボーナスも夢のまた夢。高収入が見込めないとなれば、学生からも見向きもされなくなる。
「今のメーカーはアッセンブルメーカーになってしまって、優秀な人材の確保が困難になってきています。優秀な人材が集まらないと売れる機械も開発できません」(パチンコメーカー関係者)
トヨタだって下請けから部品を納入させて、それを組み立てているアッセンブルメーカーだが、パチンコメーカーの場合はちょっとニュアンスが違っていて本当に組み立てだけを行っているだけのようにも受け取れる。
メーカーが危機感を覚えているのは来年10月に消費税が10%になることだ。8%から2%上がって10%になるわけだが、このわずか2%が今のホール経営に重くのしかかる。外税にして貸し玉を削るにせよ、対応する台間サンドの設備投資も必要になるホールもある。簡単に言えば粗利の2%が消える感じだ。それをカバーするために釘を閉めれば、さらにお客さんは飛ぶ。
「来年10月以降にホールさんの売り上げ、稼働が一気に落ちてしまう。10~15%は落ちると見込んでいます。現在の遊技人口900万人が10年後どれだけ引退しているか。そのために、メーカーはお客さんを中毒にさせるヒット作が必要なんです。それも射幸性の高い機械以外でやらないといけないんです」(同)
メーカーはメーカーで射幸性に頼らない中毒性のある機械作りを考えているわけだが、それを台無しにするのはホールの運用方法だ。
最近、とあるホールに導入されたのは設定付きパチンコの甘デジだった。設定6で1/69、設定1で1/99の確率だ。
月曜日に導入されたばかりだった。常連客は初日は設定6は入れずとも、4~5を使っている、と期待して打った。甘デジなのに300回以上嵌った。
ホールの運用は設定1を使い、釘を開けた。そんな運用方法が見抜かれたのか、3日目の水曜日に早くも客は飛んでしまった。
常連客からは「どうせ1しか使わないんだろう。どうしようもない店だな」と呆れられた。
お客さんは1000円スタートで何回回るかを数え、粘るかどうかを判断した。
「スタートは回して設定1でカネを使わせる。設定付きパチンコは釘調整もするからたちが悪い。釘を弄れないから設定付きにした? そんなことを誰が信じるか!」(常連客)から早くも見限られた。
店長は「やはり最初は6を使うべきだったかな」と後悔する。
低玉貸し営業で収益が減り、借入金の返済に見合うだけの利益が確保できないために、閉める営業ばかりするのなら、早いとこM&Aで楽になった方がいい。それがユーザーのためでもある。
設定付きパチンコも市場導入は始まったばかりで、過渡期であることは事実。今後、一切釘が触れない釘の材質や構造にしないとメーカーの努力も虚しく、業界自体の信用を失うばかりだ。

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