「電通の友人からパチンコ業界へプレゼンするので資料を見てくれないか、と相談を受けたことがきっかけです。電話帳ほどの厚さの資料を2週間ほど首っ引きで読んで、30兆円産業と3000万人ファンという規模の大きさに物凄く驚きました。当時、トヨタ、日産などの自動車メーカーをクライアントに持っていましたが、当時の国内の自動車産業の国内市場規模が21兆円です。業界人はその数字に驚きませんでしたが、外から入ってくる人間には30兆円はとんでもないサイズです。本当に腰が抜けるぐらい衝撃的な数字でした。併せて驚いたのが、あれほど巨大な産業でありながら、なぜ、これほど社会的評価が低いのか、二重の意味で驚きました」
全盛期のパチンコ産業は国内の自動車産業を凌駕するほどの市場規模を誇っていたわけだが、数字は一人歩きするもので、未だにパチンコ業界は30兆円産業だと思い込んでいる人々も少なくない。
それが政治家だったりする。
2017年度のレジャー白書によるとパチンコ業界の市場規模は21兆6260億円となっている。全盛期に比べて縮小したとはいえ21兆という数字はまだまだでかい。
この数字は貸し玉料金による売り上げを推計したものだが、貸し玉売り上げが業界のモノサシになっていたことが仇となる。
パチンコ業界のように売り上げを貸し玉料金とするグロス方式では正確な市場規模とはいえない。やはり貸し玉料金から客に還元した出玉との差額である粗利=ネット方式にすべきである。香港市場に上場したダイナムはネット方式を採用している。
カジノの国際会計基準はネット方式だ。カジノ・インフォメーション・ビュローによると世界のカジノ市場は18兆円といわれている。カジノの世界市場とパチンコ業界では会計基準が違うにもかかわらず、18兆円と21兆円を同じ土俵で比較するからおかしな方向に進む。
世界のカジノ市場よりも日本のパチンコの方が、売り上げが多いと勘違いする。
粗利ベースのネット方式ならパチンコ市場は3兆円ほどだ。本来はこの3兆円と18兆円を比較しないと始まらない。
ネット会計にしてもパチンコ業界には3兆円のポテンシャルはあるわけだが、海外のカジノオペレーターは、この3兆円をカジノへ分捕ることを虎視眈々と狙っている。
そもそもパチンコの客層がそのままカジノの客層になるわけではない。
「IRカジノを失敗させるわけにはいかない。パチンコをギュウギュウに締め上げてでもお客さんをカジノへ流さなければならない。将来的には3店方式にも手を突っ込むことになる」(自民党関係者)
パチンコ業界がネット会計だったら、政治家も海外オペレータもここまでIRカジノに熱心になることはなかったかも知れない。

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