常連だったお客さんがそのホールに姿を現したのは5年ぶりだった。常連客の方も顔馴染みのスタッフがいないのに、寂しさを覚えた。
3~4回目の来店でやっと顔見知りのスタッフを見かけ話しかけた。
「やっと見つけたよ」
「転勤やら、辞めたりで、この店に5年前からいるスタッフは私一人になってしまいました。でも、5年もナゼ来店されなかったんですか?」
「5年前に脳梗塞で倒れて、リハビリのために実家の鳥取へ帰っていた」
脳梗塞で倒れる以前に離婚もして一人暮らしだった。この時初めて知ったのが年齢で56歳だということが分かった。
リハビリに3年を要した。やっと自力で歩くことができるようになった。鳥取の実家は農家で、両親は健在だった。今は、両親の援助と障害年金で暮らしている。
家は千葉県内にあった。家を売却して実家の鳥取へ帰ることにした。荷物などを整理するために千葉へ戻ってきた。その間、半年ぐらいは千葉にいることにしたので、ホーム先にしていたホールへ遊びに来たことを話してくれた。
自宅からリハビリを兼ねて歩いて30分かけてホールまで来ていた。
「趣味や家族もなく、楽しみはパチンコだけ。4パチでは続けられないけど、1パチがあって本当に助かるよ」
両親共々パチンコ好きだった。鳥取でも農作業を終えると、両親と3人で近所のソバ屋とパチンコホールに行くのが楽しみの一つで、家族を結ぶ絆にもなっていた。
脳梗塞を患ってからタバコもピタリと止めた。
医者からは「パチンコ店へは行かないでください。パチンコ店は吸わなくても、吸っているのと同じですから、再発するリスクがあります」とパチンコ禁止令が出ていた。
それでも好きなパチンコを選んだ。
やはりこうした病気になって初めてタバコの恐ろしさが分かるものだが、「1パチはおカネもかからないしね」と気にも留めていない。
ここでパチンコ禁煙論が浮上してくる。せっかくリハビリでパチンコもやっているのに、空気環境が悪くてはリハビリも逆効果となる。
ホールの壁はどんなに空気清浄機を入れようとも壁はヤニで黄ばんでくる。毎日、そういう環境の中にいるとタバコを吸わなくても肺の中はヤニに侵されて行く、ということである。
タバコを吸わない人が8割の世の中である。タバコは税金に貢献しているぐらいで、吸わない人からは百害あって一利なしだ。

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