山手線でJRAの車内釣り広告を見た人が、この広告に大変違和感を覚えた。子供連れの若い夫婦がまるでピクニックへ出かけるような雰囲気の構図で、「あそぼう!東京競馬」のコピーがあしらわれている。

JRAの意図は家族連れでも競馬場は楽しめる、ということをアピールしているわけだが、「ここでわざわざ子供の写真を使う必要があるのか。子供のころから競馬場に馴染ませて競馬予備軍を作る。公営なら何をやっても許されるのか!」と小さな怒りが湧いてきた。
ギャンブルである競馬場に子供が入れて、遊技であるホールに子供が入れない。
パチンコ業界は広告宣伝規制によってがんじがらめで何もできない状態が続いている。カジノ解禁に向け競馬もギャンブル依存対策を政府から指導されている。
で、依存症対策の中身は、インターネット投票サイトでのアクセス制限や購入限度額を設定できるシステムの導入や、依存症の相談や治療ができる体制の拡充だ。今年度中をめどに場内や場外券売場のATMのキャッシング機能を廃止したり、ATM自体を撤去したりする。
ギャンブルで100億円も負けた大王製紙の元会長がいるように、ギャンブルの負けは際限がないのに、パチンコが3分の2に出玉規制されたのとは対照的な寛容さを感じる。要は胴元が自治体ならOKということだ。
ちなみに、2017年のJRAプロモーションCMは「HOT HOLIDAYS!」をテーマに、俳優の松坂桃李、柳楽優弥、高畑充希、土屋太鳳が出演。「友情、愛情、ケイバ場!」を合言葉に、仲間たちが初めて訪れた競馬場で体験する感動・興奮にフォーカスを当てながら、競馬が、休日の最大級のレジャーであることを表現している。明らかに若年の初心者をターゲットにしていることが伺える。
JRAの集客戦略は①若年層の取り込み、②女性ファンの獲得、③休眠層への呼びかけの3段構えだ。CMだけでなく、若年層の取り込みには、「SMART! JRA」で、2012年はAKB48や映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」とコラボキャンペーンを展開している。さらに2013年には、人気漫画「進撃の巨人」と協力し、「進撃のジャパンカップ」「進撃の有馬記念」と各レースに合わせたプロモーションを行った。
女性ファンの獲得を目指す取り組みとして、2012年に若手女性職員によるUMAJO(ウマジョ)プロジェクトを発足。UMAJOを「従来の競馬にとどまらず、女性ならではの感覚を活かし、自由に競馬を楽しむ女性」と定義。各競馬場にドリンクやスイーツが楽しめる女性専用スペース「UMAJO SPOT」を設けたり、馬券の買い方などわからないことを気軽に聞ける「UMAJOコンシェルジュ」を常駐させたり、UMAJO向けのオリジナルグッズを開発したりと、新しい競馬の楽しみ方や、個人に合った競馬の楽しみ方を提案している。
こうした取り組みの他、ネット投票の普及によって斜陽産業と言われた競馬が2010年を底に6年連続で売り上げが前年を上回る回復ぶりをみせている。しかも、中央だけではなく地方競馬も復調しているのだから、競馬人気が復活してきたともいえる。
中でも、高知競馬は売上げ不振による累積赤字で、廃止寸前に追い込まれていた。その後様々な経営再建によって業績は大幅に改善。2008年には40億円足らずだった売上が、2016年は250億円以上、と大幅にアップしている。
高知競馬といえば100連敗の“金字塔”を打ち立てたハルウララが負け馬として有名になった。ハルウララフィーバーのおかげで、赤字だった高知競馬が2004年度に2500万円の黒字を記録したものの、その勢いは長くは続かず、2005年にハルウララが引退した事で、高知競馬は再び経営難に追い込まれた。
では、なぜ、高知競馬がV字回復したかというと、2009年に地方競馬初のナイター競馬導入と2012年JRAと提携したネット販売の導入が原動力となっている。
他の競馬場では最終レースが4時に終わるのに対して、高知は最終レースが9時。この日の負けを取り戻そうとする全国のギャンブラーが一発逆転を夢にて、高知のネット投票に殺到するようになった。最終レースは弱い馬ばかりを集めて予想が難解で、オッズが高配当になるようにしたのも人気の秘訣だ。
競馬の取り組みの中でパチンコ復活となるヒントとなるものはある。若年層や女性客の取り組みは参考になるものもあるが、ここは個々の企業努力というよりも、業界が総力を挙げることが必要になる。

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