それで儲けたのが業界専業の建築・設計事務所だったが、業界バブル時代に繁盛した建築・設計事務所は今や見る影もない。
「随分、無駄なところにおカネをかけていた。無駄な設備もあった。利益が上がっている時は、それが見えなかった」(ホールオーナー)というように、当時は設計の先生にすべてお任せで、いいなりにおカネをかけた。
このオーナーの店舗ではファサードには巨大な1枚ガラスを使用していた。そんな巨大なガラスを使わなくて、途中に桟を付ければ半分の大きさのガラスでコストも抑えられた。巨大な1枚ガラスにする必要はどこにもなかった。
ホールの顔ともなる入り口の照明にもシャンデリアを使った。2階建てでエスカレーターは上下ともにつけた。
.裏手には機械などを運ぶ業務用のエレベーターを設けたが、待っている時間がもったいないので、ほとんど使うことはなかった。機械搬入はもっぱらエスカレーターを使った。
30兆円産業といわれた時代は、中小ホールでさえもそんな贅沢なホールを建てた時代だった。
時代は流れ、パチンコは簡単には儲からない業種へと転落した。昔のように儲からないとなれば、まず、出て行くコストを抑えるしかない。建物にもローコスト建築でおカネをかけなくなっただけでなく、ランニングコストも見直しを図るようになり、月々の電気代を抑える省エネにも取り組むようになった。
ところが、意外な落とし穴になっているのが、建築の部分だったりする。建築コストを従来よりも抑えたからと満足しているオーナーも少なくないだろうが、建築の素人には分からない部分があまりにも多過ぎる。
例えば、見積もりは適正価格なのか? 工期はこれが普通なのか? 終わってからの追加工事による計画予算オーバーは誰に責任があるのか? 相見積を取ると値段の差が激しいがどれが適正なのか?
大手ホール企業を除いて建築の専門部署があるわけでもないので、設計事務所や施工業者の言いなりになっているケースが往々にしてある。
そこで施主に成り代わって設計事務所や施工業者と見積もりの時点から、建築のプロが中立的立場で交渉するのがコンストラクション・マネジメント(CM)という業種だ。日本では1990年代から注目されて、今では公共事業の90%以上にCM会社が導入されている。
CM会社を入れることによって建築の公平性が保てるだけでなく、図面通りに施工しているか、図面通りに完成したか、と建築中の品質チェックから瑕疵の有無をチェックする。CM会社を入れることで結果的に建築コストが下がる。
業界でCMを行っているのがビズアーク(瀧井良章社長)である。瀧井社長は業界専門の建築デザイン会社であった環デザインに入社。その後サミーデザインと社名を変更したが同社で営業部長を務めていた。
平成26年にビズアークを設立するが、そのきっかけとなったのが、奥さんの実家のリフォーム事件だった。
高齢者をターゲットにした詐欺会社のようなリフォーム会社で、見積もりの高さを見て唖然とした。あり得ない平米数で計算されており、高齢者を騙す、典型的なぼったくり営業だった。
こうした悪徳業者を阻止するためにCM会社を興した。
今は病気になるとセカンドオピニオンを求めるように、パチンコ業界での建築に関するセカンドオピニオン役ともいえるのが同社でもある。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。