マイホームも持てれば、高級車にも乗れる。教育費にもそこそこつぎ込める。傍から見れば「その地位を死んでも手放すな」と言いたくなるが、その苦悩は本人しか分からないことだ。
「担当しているエリアの店舗の稼働が下がり続けるとやっていく自信がなくなり、体調を壊してしまい、貯えもそこそこあったので、辞めました。私自身もそうですが危機的状況に弱いのがウチの会社でした。イベントが禁止されるとライター来店に舵を切り、みんながそれに乗っかかっていました。集客するのもその程度のレベルです」(元エリア長)
業績が右肩上がりの時は、会社が一直線の高速道路を用意してくれたようなものだ。真っすぐで平坦な道路なので、新米の店長でもアクセルを踏み込めば200キロでぶっ飛ばすことができた。200キロのスピードが出せるのは、自分の実力と勘違いしながら育って行った。
本来の業界の厳しさは未舗装のでこぼこ道である。そういう悪路を走るには技術と経験を積み重ねながら、悪路を走破するテクニックを磨いていくものだ。
真っすぐな高速道路しか走ったことのない者が、いきなりでこぼこ道に放り出されたらどうなる? そもそも悪路の運転の仕方も技術もない。そこを200キロでぶっ飛ばすことなんか、到底無理である。よちよち歩きの子供のようなものである。
一直線の高速道路しか走ったことのない店長が増えても、そんな状況からは運転技術のノウハウも生まれない。
運転技術がない者がヨソの会社へ行っても通用するはずもない。あそこの出身は「使えない」の烙印を押されて久しい。
「会社の判断力も鈍っています。昔ならすぐに判断して手を打ったことが、今は長いこと悩んで出した結論がうまくいっていません。現場の裁量権がないことも問題だと思います。現場は本部から言われたことをやっていれば、文句は言われません。業績を上げるために、数字をこうした、という煙たがれ、改革派は辞めていきます。だから、イエスマンの従業員しか残らないようになっています。裁量権のない店長は必然的に教育に力を入れる。その接客に合致するお客さんは残るかも知れませんが、やはり出玉を求めるお客さんは他店へ流れます」(同)
外から見れば原因は分かっている。その原因を取り除くことができなければ、ますますじり貧になって行くだけだ。

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