この問題は日報でも何度も取り上げてきたが、それこそが警察の黒歴史だ。
自民党の平沢勝栄議員が警察庁の保安課長だった昭和62年、業界の不透明だった売上げをガラス張りにする(脱税防止)を大義名分に半ば強制的にパチンコ業界に押し付けたのが全国共通のプリペイドカードシステムだった。
東日本には三菱商事、西日本には住友商事を母体にしたカード会社が設立すると、プリペイドカードの営業の実行部隊となったのは警察だった。警察職員とOB等の安定した暮らしを支え、公務の能率的運営に資するための組織として「たいよう共済」があるが、その共済組合がカード会社設立時には両社の株主になっていた。
カード事業がスタートした頃は、各都道府県遊協の総会では、来賓と出席した県警本部のお偉いさんが行政講和の中で「業界の健全化の推進」という名目でカード導入を要請したものだ。当然、警察庁からの指示があったからだ。警察を挙げてカードを推進した。
メリットがないカードは、当然のごとく導入反対派が主流だった。昭和から平成の変わり目は、フィーバーブームで新築開店ラッシュだった。当時、カードを導入していたら営業許可はスムーズに下りたが、導入していないと申請書類はいつまでも受理されることはなかった。警察がカード営業の実行部隊だった、といえる所以である。
導入が遅々として進まないことに警察が編み出した秘策が、CR機に限って確変機能を認めることだった。西陣のCR花満開が登場してから、ギャンブル性が強まり、一気に業界の流れが変わった。それまでプリペイドカードに反対していたホールも、花満欲しさに導入を競ったほどだ。
カードが普及するとそれに伴いカードの偽造問題が急浮上して来る。セキュリティが脆弱なテレホンカードの技術が使われていたものだから、偽造天国だった。警察が推進したプリペイドカードが偽造犯罪を誘発したようなものだ。偽造被害はホールではなく、すべてカード会社がかぶった。だから、閉店後に偽造カードを使ってせっせと売り上げを上げる不届きなホールも登場したのも事実だ。新聞でカード会社の被害額が650億円と報じられたこともあったが、そんな金額では収まっていないはずだ。この一件で三菱商事はパチンコ業界が大嫌いになり、カード会社を売却して業界から撤退した。
射幸性の話に戻すと、つまり、確変機という射幸性の高い遊技機を認めることでカード推進を図ってきた先輩のツケを後輩が尻拭いさせられている、ということだ。
射幸性の問題は確変を認めた警察庁に責任の大半があることが分かる。それなら、原因を作った確変を警察の手で禁止するしかない。しかし、誰も責任を取りたくないから手を付けない。行政指導によって業界の“自主性”に任せて、業界の“自助努力”によって1/500→1/400→1/320と射幸性を落とさせて来た。しかし、射幸性を落とすことと確率を上げることはほとんど実効力がなかったようにも思われる。
「プリペイドカードは脱税の役にも立たず、確変機を認めたことだけが残った。行政は直接指導して責任を取るのが嫌。射幸性の問題をかわすのであれば、業界側が全部、1パチ、5スロにして遊技であることアピールするしかない」(警察OB)
誰も責任を取りたがらないのがお役所仕事だ。その結果として3店方式は既成事実として存在し続けている。売り上げは年々下がり続けているとはいえ、それでも24兆円の市場規模の産業である。換金を禁止にしたら業界がどうなるか、ということは、換金を存じ上げない警察が一番よく知っている。
「警察の本音を言わせてもらうと、パチンコがない方が国民生活の効率も上がる。パチンコが社会の役に立った時代も確かにあったことは事実だが、今は時代も変わった」(警察OB)
言いっぱなしで終わられたら困る。
パチンコの存在価値を最低10個は簡単に並べられないとその役目も終わったことになる。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。