パチンコ業界も全く同様の概念が根強く残っている。
言うまでもなく、盆・正月営業、土日営業がそれで、平日よりもお客さんが増えるそれらの日は釘を閉めるのが当たり前の世界だった。
それが通用したのも遊技人口が3000万人もいた時代で、遊技人口が1/3まで減少した今は本来通用しない手法なのに、それを簡単に捨てることはできない。
北関東は農村地帯で営業するホールの店長からこんな声が届いた。
「今年の盆営業は特にしんどい。涼みに来てくれる人は多いが、おカネを落としてくれない。去年よりも売り上げがだいぶ落ちている」
店長は自店だけが急激に売り上げを下げているのか、それとも全国的なことなのか不安になるぐらいの落ち込みぶりだった。
そこで、仲のいいメーカーの営業マンに尋ねた。
「人口密集地はまあまあの数字ですが、地方の郊外はよくないですね」
自店以外に地方の郊外がよくないことが分かったところで、常連客に聞いてみた。
「米価があれだけ下がったから、今年はそんなに使えるわけねえべ」
常連客はコメ農家をやっている。
去年秋に発表されたコメの買取価格は60kgで2000~3000円も下がり、過去最悪の下げ幅になっている。
コメの値段は品種にもよって違うが、ピーク時には1万5000円ほどの買取価格だったコシヒカリが年々、下落して行く中で、去年は1万円を割り、8000円台まで下がった。
買取価格が2000~3000円も下がれば、コメ農家のお客さんの消費マインドは落ち込むというものだ。農家のお客さんが多い土地柄なので、特に影響を受ける形になった。
改めてコメ農家の苦しい台所事情が分かったが、こういう盆営業の時こそ「出してあげたい」気持ちになった。
オーナーにも相談した。
「正月営業はどうして閉めていたか分かるか? それはパチンコをやりたい人がわんさか来たから閉めた。なるべく多くのお客さんに座ってもらうため。割を落とした方がより多くのお客さんが楽しめるからだ」(オーナー)という持論を持っていた。
閉めれば回転率が高くなるので、より多くのお客さんが台に座れた、という理論だが、それは需要があった時代だから通用した話。お客さんが減っている状況で釘を閉めるから閑古鳥が鳴く。
イベントが禁止され、お客さんの来店動機が薄れつつある。新台入れ替えはお客さんには「回収」と見做される現在、ホールができることは、出玉の視覚効果しかない。
出玉を見せるのがパチンコ営業の神髄だった。
等価を止めて40個に戻せば出玉演出もできるというものだ。

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