32歳で16年間とは計算が合わない、と思われがちだが、16歳からプロ生活に入った、という筋金入りだ。18歳未満の立ち入り問題をここで論じるつもりはない。
「ウチコを使って年収が1000万円あった時期もあったが、今の機械は辛い。3年ぐらい前から年収は500万円ぐらいまで下がった。6月は初めて赤字を経験しました。1人者なので生活するだけなら十分できるが、今が潮時かと思った」
そんな矢先に背中を押したのが中学校時代の友人だった。不動産会社で部長職の友人の勧めで就職することにした。
肩まで伸ばしたトレードマークのロンゲも就職のためにバッサリと切った。
「ホールの利幅がどんどん少なくなっている。それをプロが奪い合っている。ホールの今の利益を計算したらこの先10年持たない、と思った。40過ぎた時、プロをやっていても何も残らない。これ以上続けるのは無理、と思った」
月収で50~100万円は稼いでいたが、就職した会社の初任給は18万円。役職になっても手取りは30万円ほどだ。給与面では物足らないが、正社員の道を歩むことを決めた。
「貯金は100万円ぐらいで、貸しているカネは1000万円ぐらい。若いウチコを見るたびに『まじめに働け』といっています」
ピンプロの目から見たら、ホールの栄枯盛衰も激しい。関西でも勢いのあったホールに陰りを感じている。
「プロにも寛大な店だったが、大型のスロ専を出店する前ぐらいから信用がなくなった。雑誌イベントは全部ガセ。しがみつく意味がなくなった」
別の法人についてもこう見る。
「グランドオープンはプロやウチコも集客効果として釘を開けていましたが、8月にグランドオープンした店舗は、4円の釘は初日から閉めていてプロ連中も『この店アホか』と諦めるぐらいプロ飛びが凄かった。どこのホールも最後のMAX機商戦で抜いてくるでしょうから、1年後には一般のお客さんのいなくなりますよ」
儲けさせてくれていた優良店がなくなって行くことにも一抹の不安を覚えていた。
ホール側もウチコはすぐに分かる。
片手にケータイを持ってゲームなどをしながらパチンコを打っているケースがそれで、彼らはそうした行為をノリ打ち仲間には禁じた。
「初めて行く店では一般客と同化するために、ケータイは禁止。あえてボタンも連打して一般客を装っています。この前行ったグランドリニューアルの店舗は、ほぼ全員がウチコで一般客は皆無でした。ウチコのネットワークは凄い」
オープン初日が軍団とは、ホールも何のために営業しているのか分からなくなってくる、というもの。
店側から嫌われないようにタバコの吸い殻は決して床には捨てない。抽選券を取るために並ぶ時も空き缶などのゴミもちゃんと処理する。負けても笑顔で台を拭いて帰る。
店長と顔見知りになるとあいさつだって交わす。
プロから見て業界を再生する手段はないのか?
「42個の低換金にすることですが、時間があるプロには有利です。プロは止め打ちや捻り打ちで玉を増やすので、それらをハウスルールで禁止して、プロを締め出すことです。プロが飛ぶようなスタートでも一般人が居つく店はあります。軍団を排除したら回すことです」
さらに大型版権についてはこう苦言を呈する。
「大型版権を多台数を入れるホールは最初から閉めにかかっていますから、われわれにすれば大型版権は不要です。そのツケは1円まで閉めて、年金で楽しんでいるお年寄りまでも飛ばしている」
プロ連中は自らも含めて「細胞」というが、ピンプロとしてホールからウチコ軍団を守ってきた、という自負もある。
プロの間でも顔は知れわたっている伝説のピンプロ。
「ここはワシの島や」の一言で排除することもあった。自分の縄張りという意識もあるが軍団に持っていかれることを阻止した。

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