今回、そのホールを正式に取材することになった。
あれから約3年…大阪・八尾市にある「ニューBG」の佇まいはあの時とまったく変わっていなかった。正確にはあの時と変わっていないのではなく、ホールがオープンした昭和60年から変わっていないのである。
その変わらないことをコンセプトに昭和時代をアピールしている。

景品も「Always 3丁目の夕日」時代の昭和を感じさせるものが吟味されている。同ホールの中心客層が青春時代を過ごした生活感のあるものばかりだ。
懐かしい。

昭和の郷愁に浸っている場合ではなかった。今回の本当の取材目的はこの1枚の店内ポスターだった。

ホールのチラシのモデル募集である。ファッション雑誌の読者モデルは珍しくないが、パチンコ業界でホールのチラシにお客さん登場させる発想なんて前代未聞だ。
この興味から仕掛けた人物を取材したくなった、という次第である。
しかし、その思惑は出鼻をくじかれる。
「半年以上募集しています。問い合わせは3件あったのですが、まだ実現していません」と話すのは市原部長。
ここは取材の方向を変えるしかないが、そこは話題豊富な店舗なので問題はない。
まずは、昭和育ちのパチンコ劇場から。
このコンセプトを打ち出したのは去年11月から。新台をほとんど入れ替えなくても高稼働を維持していたニューBGであるが、広告規制でイベントが打てなくなると、ニューBGを持ってしても稼働は落ちて行った。
それでコンセプトを打ち出すことにしたが、その効果はあまり表れていない、という。
「よく、どうやって集客しているんですか、と聞かれるのですが、『玉を出しておけばお客様は来る』と答えています」
玉を出すことはパチンコ営業の真理であるが、市原部長が拘るのは「絶対集客」である。
絶対集客→誘導→出玉感→リピートのサイクルでこれまで高稼働を維持していたが、絶対集客がイベントだった。それが断たれたために高稼働のサイクルが崩れてきた。
イベントが出来なくなったことで、新台も導入するようになった。
「今年から使える機械で、話題の機械は入れるようにしました。仕事人は新台で買いました。集客効果はありました。集客することが絶対ですから、新台入れ替えが集客につながるのであれば、集客ツールは何でも使ったらいいと思います」
絶対集客の次の拘りは出玉感だ。
「グリーンジャンボ宝くじが過去最高の5億円になりました。5億円になったから買う気になるわけです。つまりパチンコも配当金をいかに大きく見せるか。視覚効果には滅茶苦茶気を配っています」
ニューBGの本領はここから発揮される。
事務所には約120人分の顔写真と名前が張り出されている。顧客管理システムとカメラを連動させて作成したもので、常連客はスタッフ全員が名前で呼ぶためである。
久しぶりに来店した客が会員カードを差し込むと、顧客管理コンピュータで分かるので、すかさず「○○さん、お久しぶりですね」と声を掛けに走る。
月15回来店する顧客をゴールド、月20回以上をプラチナ会員と位置づけている。
全体の客数でいえばゴールド、プラチナ会員は2割ほどだが、その優良会員が8割の売り上げを上げている。
「一度離れたお客様を戻すのは本当に難しい。プラチナ、ゴールド会員を離反させないようにするのが戦略です」
病気で入院した顧客がいれば、見舞いに行ったりするというのだから親密度が違う。
ニューBGの4円の看板台は4年前の「大海物語スペシャルMTE」(26台)。

安定した稼働が取れるコーナーを大事に使っている。これに今は仕事人コーナーが加わった。
顧客向けの会報(8ページ)を制作・印刷して、郵送で配布していることにも驚かされる。スタッフと顧客を結ぶコミュニケーションツールである。
出玉感と徹底した顧客管理がニューBGの持ち味のようだ。

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