ホールは正社員ではなくアルバイトを押し通している。もちろん、20年以上も勤務していたら正社員の声は掛けられたが、副業に集中するために断り続けてきた。
で、給料は本業が手取りで21万円、副業のせどりは月々80万円の利益を上げるまでになっている。それだけ稼いでいたら副業1本でやっていけそうだが、A子さんの回答はシンプルだった。
「ここ2~3年で副業が本業の収入を上回りましたが、せどりは競争も激しく、こんな商売がいつまで続くかは分かりません。やはり安定したホールの収入があるから、副業として打ち込むことができるわけです」
せどりの売り上げが上がるコツをA子さんはホール営業から学んだ、という。これに女性ライターは興味津津となった。
A子さんが勤務しているホールは、昔からの地域一番店だ。高齢者の多い店舗は年金支給日の偶数月の15日から数日は稼働が上がる。これは全国共通なのだが、A子さんのホールでは15日の釘は決して必要以上に閉めることはない。オーナーの指示は「気持ちよく遊んでいただくために利益は取るな」。15日から取り過ぎると月末まで営業に響くことが分かっているからだ。
2カ月に1回の年金支給日にパチンコで負けたら行きたくなくなる。高齢者をつなぎとめるには、取り過ぎない。このことからA子さんが学んだことは、メルカリなどへ出品する場合は、月初の1日、2日に絞っている。ネットの世界はクレジット決済が一般的で、クレジットの締め日である月末でリセットされるため、月初は購買意欲が増す心理を年金支給日から学んで応用したら、売り上げが上がるようになった。
ホールのポップや遊技機から学んだことは、出品する時に目立たせれうこと。やはり派手で筐体がでかいとその台に座ってしまうが、地味な色合いの台には座らないこともホール営業から学んだ。
景品カウンター業務からはレイアウトで景品の出方が全然違うことを学んだ。そのホールの端玉は、お客さんに選ぶ時間を取らないように、ボールペンに絞り込んでいる。沢山の種類の端玉を揃えると選ぶのに時間がかかってしまうからだ。ボールペンは必需品の一つで何本あって困らない。どんな商品なら悩まずに欲しいか、ということを学んだ。
そして、何より重要なことは、売れ筋商品も掴めるようになったことだ。
ホールの勤務を終えると、ブックオフ、セカンドストリート、ドンキ、ハードオフなどへ出向き、仕入の時間に充てる。仕入れた商品は8畳の部屋にぎっしり詰め込まれている。最近のヒットは5000円で買ったチャイルドシートが1万3000円で売れた。
リピーターが多くなる裏技としては、シークレット福袋をサービスで付けること。色々なものを仕入れているがどうしても売れ残るものが出てくる。それを福袋に入れて在庫処分だが、貰った人はA子さんを高評価にする、という算段だ。
仕入に行くことは楽しいのだが、一番大変なことは梱包・発送作業だ。この忙しさもあって旅行に行けないのが目下の悩み。発送作業はアルバイトを雇えば解決する問題だが、「ノウハウを盗まれるのが嫌」という理由で、一人でやっている。
生活費はホールの給料で十分賄える。副業の収入は貯まる一方で、資産は1億円ほど。株でも運用しているが、資産の約半分は株で稼ぎ出したものだ。
古物商の資格も取得し、確定申告もきっちり行っていることはいうまでもない。
ホール営業からせどりのノウハウを学んだということで、女性ライターは俄然パチンコ店に興味を持ったものの、1人で入る勇気がないので、パチンコ業界関係者に同行のお願いをした。ライターなら怖いものなしで突撃取材には慣れていると思ったら、初心者では1人で入れない“見えない壁”があった。
これも業界が解決しなければならない課題の一つだ。

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