初年度は3人が入社したがすでに全員退社している。去年は6人が入社したが半年で4人が辞め、残る2人はボーナスが支給された7月で会社を去った。オーナーは始めたばかりの新卒採用にすっかり自信を無くしている。
今後のために辞めた全員に3万円払うから理由を聞かせて欲しい、と連絡を取ったところ、3万円に釣られて全員が応じた。
オーナーは「大学を出てウチのような会社に来ること自体が程度が悪かったのか」と自問自答した。辞めた全員が上からの指示がないと動かない指示待ち族で、自分の方から積極的に動こうというタイプではなかった。
辞めた理由は「遣り甲斐を感じなかった」と異口同音に口を揃えた。
ボーナスと退職金制度は3~4年前に整えられていて、給与面では特に不満はなかった、という。
辞めた理由が遣り甲斐が感じられなかった、ということが分かって、オーナーは「ホールで働いて遣り甲斐を見つけさせることができなかった上司が悪い」という判断を下した。
来年入社予定の内定者は8月現在でゼロ。
新卒採用を担当する人事課長は「大卒の新卒を採るのは止めませんか」と喉まで出かかったが、飲み込んだ。
オーナーは新卒を採用しても長続きしないのは、人事課長の責任にしてしまった。その結果総務部へ異動。新たに採用コンサルを外部から入れることにした。そして、8人採用を目標に掲げている。
元々定着率の悪い会社で新卒を育てたこともないのに、人数だけ揃えても意味がない。
断片的な情報しか入っていないので、そのホール企業が新卒者に対してどのような教育を施していたかわ分からない。
大手の新卒採用となると内定が決まった時点から内定者研修が年に2~3回は行われる。それは内定者の気持ちをつなぎ留めておく意味合いが強い。内定者同士の顔合わせやチームワークとコミュニケーションを図ることが狙い。併せてビジネスマナー研修なども行われる。入社式の1カ月前に最後の内定者研修が行われるケースもある。身だしなみ確認、社員となる心構え、社会人への気持ちの切り替えなどが目的だ。
新卒を迎えるに当たって教育担当者の研修も行われる。年間の昇進・離職データを共有し、成果が上がる職場環境を作るためのGOODサイクル・BADサイクルについて学ぶ。
入社後はすぐに1週間余りの合宿研修ののちに店舗へ配属される。
現場に出てからも入社1カ月にフォローアップ研修が行われる。先輩社員を交えての悩み相談会が開かれる。その後の3カ月、半年、9カ月とフォローアップ研修も欠かさない。
新卒を受け入れる側もここまでやっているわけだが、前出のホール企業ではそこまでやっていなかったような気がする。人を採用してもその後の教育がいかに重要かが分かるケーススタディだった。

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