サミー、平和が大規模なリストラを敢行。老舗の西陣が廃業するなど、パチンコ業界のメーカーも厳しい状況に置かれていることは、当然知っていての選択である。理由は後述する。
ゼミの教授はA君の進路希望先には反対派だ。理由は単純明快。将来性がないからだ。大きな設備投資や開発費が出せない業界になっていることも勧められない理由だ。
A君が狙っているメーカーは、直近の売り上げを2021年度で公表している。なぜ、2022年度ではないのかというと、前年比で半減しているので見栄えも悪いからと思われる。
右肩上がりの時代のパチンコ業界なら兎も角、右肩下がりでも遊技機メーカーを目指すのは父親の影響が強い。大手ホールの役員をしているので、パチンコに対して悪いイメージも持っていない。大学に入ってパチンコも打つようになった。自分が開発した遊技機で業界を改革する夢もある。業績がたった1年で半減するということは、その逆もある。ヒット機が出れば一発逆転するダイナミックさがパチンコ業界の面白味でもある。
パチンコ業界への就職を断念させたい教授は、日本のお家芸で世界一だった白物家電業界を引き合いに出した。日本の高い技術力が海外へ流出して行ったことで中国・韓国・台湾メーカーが台頭してかつての勢いはない。かつての栄光を日本の白物家電メーカーはもはや取り戻すことはできない。パチンコ業界のメーカーも白物家電メーカーと同様だと諭した。
パチンコ業界に一発逆転があるとすれば、イノベーションを起こせるかどうか。そのイノベーションとはパチンコ業界におけるiPhoneのような革新的な遊技機が登場するかどうかにかかっている。
ガラケー時代にiPhoneが登場して、世の中は急速に変わった。インターネットで世界とつながり、人間の生活を根本から変えたと言ってもいい。
優秀なA君だが「パチンコ業界のiPhoneを作ってやる!」という気構えまではさすがになかった。
さしずめ、iPhoneのような遊技機とは、誰もが打ちたくなるような遊技機だろう。それによって遊技人口が爆発的に回復するのだから。
A君の父親としては遊技機メーカーへ就職して欲しかったようだが、今は海外へ留学して世界企業で働くことに方向転換を図ろうとしている。
やはり業界を変えるには優秀な人材が必要になる。パチンコ業界の知り合いの子息で東大へ行った人が何人もいる。親の背中を見て育ったA君は貴重な存在だったのに、残念な結果だ。

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