営業歴25年。総台数270台は店のスペックとしても見劣りがする。競合エリアの中には全国大手チューンが営業している他、2年前には地元の競合店が新店を立ち上げると、もう一方の競合店が昨年末にグランドリニューアルオープンを仕掛けて来た。
それに対して「サーカス」は動かなかった。
現場はリニューアルの提案をしたがダメ、何を提案してもダメだった。それでいて、会社の要求は稼働を落とすな、利益は確保! だった。
おカネがかかることはすべてダメ。守りの営業で前任の河本優店長が取った行動は「スタッフの困りごと解決が先」だった。限られた経費を一人ひとりに渡した。

「お客様の困りごとを見つけるのは現場のスタッフです。従ってスタッフから上がる意見はお客様の声として捉え、スタッフから上がってくる提案は必ず採用しようと思いました。例えば、お客様のために10万円の物品が必要になった場合は、さすがにできませんが、それを5000円のもので代用できないか考える工夫をするようになりました」(河本店長)
2016年1月からスタートした「お客様の困りごと解決」は、スタッフの自主性を引き出すために、1万円以内の予算なら許可を出した。
手書きのイラストを描くのが得意なスタッフは、お客様に親近感を持ってもらうように、頑張った。「上手に描いているね」と声をかけてもやったことが遣り甲斐につながった。

「そこらへんにあるものではなく、ウチ独自のものでお客様の目に留まるものを作り上げてきました。手書きで書いたお手紙が誉められ、お客様からの声が励みになって、仕事も楽しくなってきました。トイレに観葉植物を置いたり、匂いのアロマを置いたりしていると『トイレをかわいく飾っているね』といわれると遣り甲斐を感じます。どれだけおカネを掛けずにお客様を楽しませるかを考えるようになりました」(中谷さん)
提案が採用されると、やる気スイッチが入り、どんどん提案を上げてくるスタッフが出てきた。その結果、MS調査で200点満点を連発すようになったが、200点はただの数字であって本当の目的ではないことに気づいた。お困りごとを本気で解決していたら200点の方から近づいてきた。
それ以上に大切にしているのが全社を挙げて取り組んでいる「WOWストーリー」だ。同社の最高の商品とは機械でも店構えでもない。この「WOWストーリー」が最高の商品である。
「WOWストーリー」とは自らが行動し、お客様から頂いた素敵な出来事のことだ。そこには笑顔や感動がある。それがスタッフの成長であり、学びにもつながる。

社員は月1回WOWストーリーを文章で提出する。月1回の選考会では互いのストーリーを褒めあい、優秀ストーリーを1冊の本にまとめている。
また、社内用Facebookで今月のWOWストーリーが配信され、全社員で共有する。これはすでに7年以上続けられているが、1年で1000のWOWストーリーが生まれる。
WOWストーリーとお困りごと解決の両建てで月12回以上来店してくれるRC顧客を増やし、新店がオープンしても1.5倍の稼働をたたき出している。
同店では200点満点やお困りごと解決に満足することなく、お客さんからの提案やクレームはアイデアの源泉として捉えている。その新たな取り組みが「未来掲示板」である。

これはお客さんやスタッフの夢を叶えるための掲示板でもある。
あるお客さんが「健康に気を使っている」と書き込んでいた。
これに対して店は万歩計の貸し出しサービスを始めたほか、タバコは軽めのものを勧めるようにした。
「台がうるさい。大当たりの音をどうにかしろ」
サーカスがとった行動はメーカーに意見書を出すことだった。ホールの騒音問題は業界がいの一番に解決しなければならない問題だ。どうせ無理と諦めた時点でパチンコの未来はないし、パチンコは今後も変わらない。

すべての情報に本気で向き合うことで業界の未来は開ける。

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