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IRカジノ第一号は大阪・夢洲のこれだけの理由

大阪がカジノ構想をぶち上げたのは、2008年、橋下徹が大阪府知事に183万2857票を獲得し当選した翌年の2009年に遡る。大阪府庁舎を大阪市住之江区の大阪ワールドトレーディングセンタービルディング(WTC)への移転を後押しにするために、WTC周辺エリアの活性化策として、カジノによる国際集客特区の創設や迎賓館施設の整備などを検討することを発表している。当時はWTCカジノ構想と呼ばれていたように、府庁舎の移転が優先されていた。

橋下知事(当時)はカジノ構想について次のように述べている。
 
「関西には国際的な大規模コンベンション施設がない。国際展示会議が開かれた後、同伴したご婦人方のためにも必要になるのがアミューズメント機能で、カジノが必要になってくる。国際展示とアミューズメント(カジノ)はワンセットになっているのが国際的な流れ。国からのおカネに頼るのではなく、関西が独立して自分たちでおカネを稼ぐ。外国からのお客さんに来てもらい、外国からのおカネを呼びこまないと少子高齢化ではやっていけない」と持論を展開している。

府庁の一部が移転したWTCはアジア太平洋トレーディングセンター(ATC)と共に、大阪市が1994~1995年にかけて住之江区の臨海部に完成させた大型施設だった。ところが、交通の便が悪いことから思った人が集まらず、WTC周辺は大阪市の負の遺産が点在する象徴的な存在となっている。
 
WTC周辺の中には手つかずの大阪市の大きな負の遺産がある。それが、大阪カジノの候補地となっている人工島の夢洲だ。2008年のオリンピック招致に失敗し、会場や選手村となる予定だったが、220ヘクタールの広大な土地の活用のメドが立たないまま、時間だけが経過していた。
 
位置的には大阪市中心部の梅田から13キロ南に下った場所で、車で30分ほどの距離にある。最寄り駅は地下鉄中央線の「コスモスクエア駅」だ。ここから夢洲は海底トンネルで結ばれているが、徒歩では渡れない。
 
夢洲がIRカジノの候補地として適しているのは、本土から離れた人工島で施設や住宅が一つもないことに加え、隔離性を活かした治安、騒音、テロ対策が実現できる点だ。さらに、有利なのがユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にもほど近いこと。IRカジノを堪能した後はUSJ観光ができるので、海外からの集客にも一役買うことになる。

2011年、大阪都構想の実現に向けて橋下は任期を3カ月残して府知事を辞職。任期満了に伴う大阪市長選に出馬して、政敵であった現職の大阪市長の平松邦夫を破る。大阪府知事選では大阪維新の会の幹事長だった松井一郎が初当選する。長年犬猿の仲が続いた大阪府と大阪市はトップが大阪維新の会になったことによって、大阪都構想が大きく動き出す。
 
大阪都構想と併せて、大阪維新の会が強力に推し進めてきたのがIRカジノだ。

橋下は大阪市長になってからも「夢洲に世界一のカジノを含む統合型リゾート施設を持ってきたい。カジノは”腹巻きをした人がサイコロを振って”といったかつての賭博とは違う。きっちりとしたルールとマナーを決めた”大人の遊び場”なのです。国際会議場や美術館・劇場もある総合リゾートにしたい」と意欲を示した。

カジノオペレーターの大阪詣で1兆円の投資をぶち上げる
いくら自治体がIRカジノの候補地として手を上げようとも、実際に運営するのは民間のオペレーターである。採算性の合わない立地ではカジノオペレーターも食指を動かさないが、大阪・夢洲は理想的な場所ともいえる。多くの海外カジノオペレーターが大阪にラブコールを送っている。実際、カジノオペレーターの経営幹部が2014年頃から大阪府の関係者に会い、投資意欲を示している。

アメリカのカジノ運営大手のMGMリゾーツ・インターナショナルのジェームス・ムーレン会長は、大阪IRに対して、5000億円から1兆円の投資を行う計画があることを発表している。大阪の魅力としては京都や神戸の観光資源に隣接し、世界から観光客の誘致が見込めることを挙げている。

ラスベガス・サンズも負けていない。「地理的にもアジアの主要都市に近く、輸送や観光インフラ持つ大阪がIRにとって魅力的な立地である。大阪が世界的に著名な旅行先になることに貢献する上で、他社には追従できない位置にある企業」と存在感をアピール。MGMを上回る1兆1100億円規模の投資を日本に行う、と強い意欲を示している。

アメリカの不動産開発・カジノ事業者のラッシュ・ストリート・ゲーミングのニール・ブルーム会長は、日本で事業展開する場合は「大阪のみに関心を持っている」と述べ5000億円ぐらいの投資をする準備ができていることを表明している。

それ以外にも、メルコ・クラウン・エンターテインメント、ゲルティングループ、シーザーズ・エンターテインメントグループなどのトップが松井知事と会談を重ねている。いずれの事業者も5000億円以上の投資額を提示している。大阪府を訪れているのは全部経営のトップで松井知事も本気度の手応えを感じ取っている。

立地環境は抜群だが、夢洲に唯一欠点があるとすれば、アクセスだ。現在、夢洲と対岸の咲洲は「夢洲トンネル」のみで結ばれているが、IRカジノを開業するには鉄道でつなぐことが急務とされている。

大阪市は2008年の大阪オリンピックに向けて、道路と鉄道が共有できる夢洲トンネルを完成させたが、オリンピック誘致に失敗したために、地下鉄の延伸は棚上げされていた。

夢洲を結ぶ鉄道ルートは、USJに向かうJR桜島線の延伸案と地下鉄中央線の延伸案があるが、コスト的には地下鉄中央線終点のコスモスクエア駅からの延伸が有力視されている。

鉄道整備には500億円規模の予算が算定されているが、財政難の大阪市にすれば、整備費はカジノ業者に丸抱えさせたいのが本音だろう。
引く手あまたの状況ではインフラ整備も含めて投資意欲を示している事業者が落札条件になりそうだ。1兆円と桁外れな投資額を用意しているカジノ事業者にとって、500億円ははした金かも知れない。

カジノオペレーターの大阪詣でに気を良くした大阪市は、2016年3月31日に夢洲まちづくり構想検討調査費として、5993万円の予算を計上した。これにより、夢洲にIRカジノ建設への調査にGOサインが出た。

大阪がIRカジノ候補地として有望なのは、大阪府、大阪市に加え、関西経済同友会が全面的に後押ししているのも強味だ。関西経済の地盤沈下が進む現状で、大阪にIRカジノを誘致した場合、関西に1兆円の経済効果が生まれることが期待されるからだ。大阪と隣接する京都、奈良には世界遺産を数多く抱えている。海外からの観光客が増えれば、関西経済が活性化し、東京と並ぶ「二極」の一つとして大阪の復権につながる。
 
関西経済同友会がまとめた夢洲IR構想の提言では、世界初の「スマートIRシティ」を建設する。町全体のモチーフは浪華八百八橋の原風景で、水都として栄えてきた大阪の歴史、文化を重視し、水都大阪のシンボルとなる海上都市を創造する。独自の強みを持った関西企業が多様な分野に参画して、関西から日本を元気にするオール関西のプロジェクト体制で臨む。

大阪府と大阪市の二重行政の無駄を省くことを目的とした大阪都構想は2015年5月17日に行われた住民投票で、僅差で否決され、廃案となった。この結果を受け橋下は政界から完全に引退。大阪IRカジノの旗振り役だった橋下がいなくなったことで、大阪市議会で橋下が提案していた補正予算の中で「IR調査費」に充てられていた7600万円を3000万円に減額可決。大阪府もIR調査費3800万円を全額削除した修正案を可決している。

これにより、大阪へのカジノ誘致は一層厳しくなり、位置づけが横浜、沖縄に次ぐ3番候補として位置づけられることになる。
橋下ロスにより、大阪IRカジノ誘致はトーンダウンしたかのように捉えられたが、橋下引退に伴う2015年11月22日の大阪市長選では、大阪維新の会は衆院議員だった吉村洋文を擁立して、当選を果たす。吉村も2016年9月にはシンガポールのIRカジノを視察して、担当者からギャンブル依存症の説明を受けている。

現在、IRの実施法案が作成中だが、以上の理由から国内第一号は大阪・夢洲が最有力候補といえる。




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