常連客が店の自販機でカルピスソーダを買った。2口ぐらい飲んだ時に中に虫が入っていることが分かった。そこで呼び出しランプを押して、従業員を呼んだ。そして、事情を説明した。
すると、もう一人従業員が来て、自販機の所へ行ったり来たりし始めて、出た答えが「うちは一切かかわることができませんので、お客さんの方からこちらへ電話してください」といって1枚の紙きれを渡された。
コカ・コーラのカスタマーズセンターの電話番号が書かれていた。
「店の自販機なのに客に電話させるのはおかしくないか?」
「いえ、ウチは一切関わることはできません。そういう決まりになっています」
店の自販機なのに「申し訳ございませんの」の一言もなく、「ウチはタッチできません」、「関係ありません」の一点張りに少し言い合いになった。
渡された紙のコカ・コーラのカスタマーズセンターへ電話すべく、店の外の公衆電話から電話した。事情を説明すると係りの者から折り返し電話するとのことで、電話を切った。
席に戻って打ち始めたが腹の虫が治まらない。
カウンターへ行って先ほどの従業員を呼んでもらった。
「お客に電話させるのは、おかしいじゃん。上司を出してくれないか」
「今、会議中で出られません」
「会議と客とどっちが大事なんだ!」とつい大声になった。
「じゃ、もう1回オレの方からベンダーに電話する」
「じゃ、私が電話しますよ」
2人で店の外に出た。
外でも言い合いがしばらく続く。
「じゃ、マネージャーと話をする」といって店に入ろうとした時、従業員が客の腕を掴んで店内に入らせないようにした。
「今、俺の体に触ったな。お客の体に触るのはおかしいだろう」
「いや、そういうつもりじゃ…」
「110番するぞ」と本当に110番通報した。
そこへ、顔見知りの副主任がやってきた。
事情を説明していると、また体を触ってきた。
「また、体を触ったな!」
「いや、私も説明しようと思ったので…」
そこへ4人の警察官がやって来て、別々に事情を聞き始めた。
警察官がお客に「旦那さんはどうして欲しいんですか?」と聞いてきた。
「私はきれいなものに、取り換えてくれるか、100円を返してくれたらいいだけなんですが、最初に謝ることもなく、ウチは関係ないという。さらに、客の体に触っても謝りもしないのはおかしい」
客からの言い分を聞いた警察官がおもむろにこう切り出した。
「職業差別をしているわけではないのですが、こういうところで働いている人の中には、常識が通じない人が多いんですよ。私の方から店長にもよく言っておきますので、ここは収めてください」と客をなだめるようにいった。
それで終わった。
残り玉を打っていた客の下に先ほどの従業員が謝りに来た。
「最初に申し訳ございませんの一言がないのが、ダメ。それに、むやみに客の体にも触るものではない。これが女性だとセクハラで訴えられるところだぞ。トラブル処理は1対1ではやらないこと。ホール側は必ず2人でやらないと後々トラブルの元になる」と諭した。
「体に触ることがいけないことだと思っていませんでした」
クレーム処理は初期消火がいかに大事であるかが分かるケーススタディだった。

件の自販機は、どこで虫が入ったか原因が分かるまで使用中止になった。

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