店を出たところでこう声を掛けられた。
「レジを通していない品物はありませんか?」
突然のことでびっくりしたが、身に覚えのないことで「ありません」と答えた。
どうやら自分が万引き犯として疑われていることに気づく。
「鞄の中を見させてもらえますか?」
身に覚えがないので素直に応じると鞄の中から見覚えのないものが出てきた。両面テープだった。
「事務所で話をしましょう」と事務所へ連れて行かれた。
現物が出てきた以上、万引きGメンはこの店長のことを犯人と確定している。
店長にすれば身に覚えのないことを「やりました」とは言えない。やったとは認められないし、認めたくもない。店長はこれを「冤罪」だということが頭をよぎった。
「認めれば話は終わる」と万引きGメンは促す。
押し問答が3時間ほど続いた。その間に警察も登場した。
「やっていないものは、やっていない。国選弁護人を呼んでもらえますか」と懇願した。
警察は万引きGメンのことがすべて正しい、というような見方で、なだめるように自白を促すだけだ。
万引きの嫌疑をかけられているのは両面テープだ。素直に認めれば、厳重注意で帰してくれるようなものだ。早くこの場を逃れたいから、とついついやってもいないのに認めるケースが往々にある。
事務所に入ってから6時間後に国選弁護士がやってきた。
「やっていないのなら、やっていないことを証明しなければいけません」と弁護士が切り出した。
商品を触っていないのなら、店長の指紋もないはずだ。検査の結果、両面テープからは指紋は出なかった。
「手袋をすれば指紋は出ない」と万引きGメンは不服だが、手袋などもどこにもない。
監視カメラのビデオは死角があるからと出そうともしない。
その日は証拠不十分で保釈の身となった。
弁護士は今回の事件をこう振り返った。
「あなたをはめようとしている誰かがいる。私服のガードマンの中には成績を上げるためにでっちあげるケースもある。警察はこういう場合、ガードマンの証言を信用する。痴漢でも被害者の意見が通るが、それで冤罪になった人も沢山いる」
今回は昼間のホームセンターで起こった冤罪だったが、店長以上の役職者ともなると酒席では色々な罠を仕掛けられるケースも出てくるので、くれぐれもご注意を。

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