この時の被害は死者3名、負傷者784名。全壊72棟、半壊429棟、一部損壊9021棟だった。
死者3名中、2名がパチンコ店で遊技中のお客だった。
その時の模様を再録する。
12月28日、青森県八戸市の繁華街で知られる朔日町は、御用納めを終え忘年会帰りでほろ酔い気分のサラリーマンやOLで賑わいをみせていた。
その一画、六日町交差点の角地にあった「ダイエー」は、1週間前に新装オープンしたこともあって、240坪のホール内に設置された380台のうち280台がお客で埋まっていた。
午後9時19分、まさに天地をきしませながら激しい揺れが襲いかかった。
お客のほとんどが、目を上部に移したその瞬間、天井のコンクリートに亀裂が走り、白い煙のようなものがパーッと舞い散った。
それまでBGMを背景に、チンジャラの喧騒に包まれていたホール内が悲鳴と怒号に一変した。
誰彼言うともなく、「逃げろ」、「危ない」の声があちこちから上がり、客達はいっせいにイスから立ちあがった。
建物を支えていた柱がひしゃげ、それとともにズ、ズーン、ド、ドーンと何段階かに分けて天井が崩れ落ちてきた。
床に散乱した夥しいほどのパチンコ玉を掻き分けるように、身を屈め、床を泳ぐように出口を求める客でホール内は修羅場と化した。
この三陸沖地震で3階建てのダイエービルが倒壊、遊技客の32歳の自衛官と46歳の大工の2人が死亡。飛び散った玉に足をとられ転倒して骨折した2人の客が入院。合わせて10人あまりの負傷者を出す惨事となった。
亡くなった2人は、地震発生時、フィーバー中だったという。地震の発生直後、客の大半が逃げ惑う中、なかなかハンドルから手を放そうとしなかったという。
さらに、揺れが落ち着いた数10分後に倒壊したホールに入った店員の1人は、信じられない光景を目の当たりに、唖然とした。
なんと、崩れかけた天井板を片手で支えながら、パチスロに興じていたお客がいたというのである。 危険が迫りながらも、なお機械にしがみついて離れない客に店員達は一様に驚かされた。
遊技に熱中するお客の優先順位は、逃げることより換金したときの金額を思い浮かべながら、打ち続けることが大事なことのようだ。
以上
地震が起こってもパチンコ客はすぐには逃げない。それは今回の熊本地震でユーチューブにアップされた動画でも同じ光景が展開されている。やはりおカネがかかっているので、大きく揺れても大地震だとは想像できずに、その場を離れられない。地震直後に閉店措置を取ったホールの中には、連チャン中のお客からはクレームが来たケースもあった。
その場では近隣の建物が倒壊していることも想像できないにしても、おカネがかかっていなかったら、すぐに外に逃げるはずだ。
稼働の上がる機械は中古価格も跳ね上がる。新台の3倍、4倍の価格になる人気機種もある。それはホールも元が取れると思うから高くても買う。それはひとえに追っかけてくれるお客がいたからだ。
前出の八戸のダイエーは20年以上前だが夜の9時でも7割以上の稼働率を誇っていた。今、この時間帯で7割以上も稼働があるホールが何軒あるか。それだけ、追っかけるお客もいなくなっているのに、価格操作の可能性もある中古機に手を出さないことだ。

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