年齢は80歳前後と思われた。
女子従業員がおばあちゃんをトイレに案内した。
用を済ませておばあちゃんは従業員にこんなことを話した。
「もう、漏れそうで漏れそうで、それで初めてパチンコ店に入ったの。助かったわ。パチンコってどういう遊びなの? ちょっとやってみようかしら」
緊急時にトイレを借りたお礼にとばかり、おばあちゃんはパチンコをする気になった。
従業員はパチンコには4円と1円があって、4円なら100円で玉が25発、1円なら100発玉が出てくる、というところから説明、そして遊び方を懇切丁寧に説明した。
おばあちゃんは1パチで遊ぶことになった。
するとビギナーズラックで5分ほどで大当たり。ジャンジャン玉が出始めたことに驚いた。
2000発ほど出たところで遊技を終了した。
ここからの説明が大変だった。
ホールが出玉を換金できますとはいえない。
「特殊景品を他の場所へ持って行くと他のものと交換してもらえます」と説明したが、全く理解してもらうことは出来なかった。
パチンコをまったくやったことがないおばあちゃんに、換金とかおカネという言葉を使わずに説明するのは至難の業だった。
結局、一般景品に交換してその日は帰って行った。
すると翌日もそのおばあちゃんが店にやってきた。
トイレを借りてパチンコを始めたことがきっかけで、今では、おばあちゃんは常連さんになっている。
ただし、おばあちゃんの遊び方は至って健全。1日1000円と決めて、それ以上におカネを使うことはしない。
負けることの方が多いが、運試しのような遊び方に、おばあちゃんはそれで十分満足している。
常連になることで従業員や他のお客さんとも顔見知りになって、会話を求めてホールに来ているのだった。おばあちゃんにとっては、今やホールは憩いの場所になっている。
地獄で仏ではないが、漏れそうな緊急自体でトイレを借りた時は、そのお礼にちょっと打ってみようか、と思う人は、このおばあちゃんのように実際にある、ということだ。
ホールのトイレは相対的にウォシュレット付きで清潔なので、利用者にはありがたい存在だ。

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