マルハン研究の業界誌記事や書籍はあるが、競合他店の現役店長が考察したマルハン研究は数少ない。そこで、ヤンキーパンダ店長が自らの体験を基にマルハンを考察した。このシリーズは不定期で4回に亘ってお届けする。
以下本文
私は過去10年間で3府県6店舗の店長をさせていただきました。4キロ商圏で4店舗、15キロ商圏では全店舗がマルハンと競合してきました。
研究を兼ねて、プライベートで、マルハンで遊ぶ事も多くあります。マルハンと関係するいくつかのエピソードをまじえ、「業界とマルハンの広告宣伝」について私見を述べさせていただきます。
2002年夏。ちょうど10年前のことです。
自店事務所に 一本の電話が入りました。
「店長、マルホンさんから電話です」と事務員さん。
「あれ? マルホンは○○商会との取引であり、直販・直売買ではないはず。何事かな?」と首をかしげながら私は受話器を取りました。
「株式会社マルハンと申します。この度、△△地区の出店が決まりまして、△△遊技場組合にごあいさつに伺いたと思いまして…」
電話の主は、マルホンではなくマルハンだったのです。
昔は地元の老舗店舗の事務所が、遊技場組合の事務所を兼ねることは よくありました。この組合の場合もそれでしたが、組合事務所はすでに移転していました。
マルハンの担当者はかなり古い名簿を見て電話されたのでしょう。
「あいにくですが、遊技場組合は移転しておりまして、今から言う電話番号におかけ直しください」
間違い電話によって、結果的に競合店舗に直接、出店を伝える事態となったのです。
通常、新規出店情報はメーカー、販社、商社、不動産会社などから「未確定情報ですが」と前置きして入ってくることが一般的です。マルハンに関しては、そう言った事前情報は全く入っておらず、情報の統制がとれていると感心しました。
「組合にあいさつ」という段階ですから、公開できる状態です。同時にそれは「公開に至るまで一切、外部に漏らさなかった」ということです。
出店用地は自店から約1.5キロ。幹線道路から入り込んだ道沿い、片側1車線対面道路。パチンコ店の出店用地としては、相応しくないと思われる立地で、ノーマークでした。
それまでのパチンコ立地の常識をくつがえす選択に感じました。
この立地で出店することは自信の表れなのか、勇気なのか、はたまた無謀なのか、判断に苦しみました。
当時のマルハンは120店舗前後のチェーンでした。店舗数ではダイナムに次ぐ、業界2位。(因みに公式HPでは2012年12月20日現在283店舗、2012年度13店舗となっています)
業界1位を狙い、あえて地域一番店の近隣に出店する。そういう意図が見えました。
数日後、同業他社のお節介な知人から電話が入りました。
「ヤンキーパンダちゃん。負けないでよ」
「えっ、負けないって、何に?」
「マルハンがお宅に、宣戦布告の電話をしたと聞いたよ。『ぶっ潰してやる』って」
「いやいや、組合と間違ってあいさつの電話をしてきただけだよ。こっちもマルホンさんと間違ったんだけど」
「もう、そこら中で噂になってるよ。みんな注目しているよ。絶対、負けないでね」
「・・・・」
(お宅の社長から うちの社長に言ってくれよ)
勝ち負けの基準が良くわかりませんが、おそらくその基準は外部からも判断できる稼働率のことかと思います。
個人的には「目立たずに、継続的、安定的に営業利益を残す」ことが賢明と考えてきましたが、外野はそれを許さないようです。
地元意識の高い▲地方。ライバルだけど同じ地元を応援。電話のエールに対する嬉しさはありました。
と同時に、人を介した情報の不確かな事。「あきれた」を通り越して、笑えてきました。
あいさつ希望のアポ電話がいつの間にか「ぶっ潰してやる」に化けるとは…。人の口には戸を立てられません。
現代社会は情報社会でもありますが、情報の真贋にはくれぐれも気をつけたいものです。しかし、ありえる話なんで、パチンコ屋らしいといえば、らしい表現なのですが。
10年前、▲地方ではまだ馴染みが薄かったマルハン。全国展開中であり、いずれは競合すると覚悟はしていたものの、その時期が早くなったことへの戸惑いはありました。
しかし、予測よりも早くなっただけであり、避けて通れない道です。と言うことで、マルハンの主要店を調査・研究することになりました。
機種構成、設備、POPポスター、1000円あたりの回転数、接客、店内美化、交換率、地域におけるポジション、競合店の状況などなど。
調査項目は多岐にまたがるのですが、何と、のぼりと曜日毎の機種イベントが自店に酷似! 機種イベント名、のぼりの色使いなどが酷似しており、偶然の一致とはとても思えません。
実はマルハンは既に自店を研究済みであり、一部、模倣していることが判明したのです。
既に出店を公表している段階なので、研究済みは当然の事でしょうが、自店の取組みを模倣するマルハンに「俺たちは大きいぞ」と言うスタンスは微塵も感じられませんでした。
さらに、マルハンに数年在籍していた知人の情報を集めました。
印象に残る情報は「マルハンはマナーの悪いお客様の排除ではなく説得を粘り強く行ってきた」ということです。
中にはマナーの悪いお客様の家庭訪問をしたこともあったとか。今ではどうされているのか判りませんが、10年前はドライさよりもそう言ウエットな対応が良とされたのでしょう。
ちなみに業界では模倣し合い。
「パクリ合い」ならぬ、「パクリ愛」。と勝手に表現していますが、ノークレームのアイデアや機種イベント名の「パクリ愛」がしっかり存在します。
例えばメーカーも「超海」「海です」「ガオガオフェスティバル」「スモモちゃん」・・・海物語、ジャグラーなどオリジナル版権についての他社による流用はよく見かけられました。
もちろん 内諾は得ているでしょうが、「パクる」のはリスペクトの証、「パクられる」のは一流の証かと。
吉本の「面白い恋人」は本家「白い恋人」から訴えられましたが、パチンコ業界に「パクリ愛」がなければ、年中訴訟かと、そう感じています。
余談ですが、「海のニセモンまあまあやな」と言ってニコニコして超海をいつも打っておられたオジサンの顔は今でもしっかり覚えています。
そのオジサンには「ニセモン外したのか!」と超海撤去時に叱られました。「ニセモン、ニセモン」と最後まで「超海」と仰いませんでした(笑)。
つづく
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