すぐに取りざたされるのがパチンコ依存症との関連だ。
ギャンブル依存症はWHOにも認定されている病気の一種で治療する病院もある。依存症は個人の問題とはいえ、ホールにも道義的責任の一端はある。
業界では子供の車内放置防止のポスターを店内に貼り出し、駐車場の見回りも定期的に行っている。
今回事故のあったホールも、「子供の車内放置は児童虐待行為です」とオリジナルのポスターを貼りだして注意喚起を促していた。それでも防げなかったことは誠に残念な結果だ。
逮捕された母親を取り調べていくうちに、今回はパチンコ依存症から起こった車内放置ではなかったことが明らかになった。
45歳という高齢出産から育児ノイローゼとなり、心療内科にも通っていた。
児童相談所では「育児困難」と診断され、赤ちゃんは乳児院に預けられていた。赤ちゃんを一時帰宅させた時に事件は起こってしまった。
母親は店内に3時間ほどいたが、ほとんどパチンコをすることもなく、店内を歩き回ったり、ぼんやりと座っていたようだ。
育児放棄で、夏場の車内に幼子を閉じ込めればどうなるか分かって取った行動だった。
パチンコ依存症との関連はなかったとはいえ、車内放置事故を未然に防げなかったことは、業界としても褌のひもを締め直さなければいけない。
駐車場の入口に係員を立たせ、子供連れかどうかを1台ずつチェックするだけでも大幅に防ぐことができるはずだ。まず、子供連れ駐車場に入れないことが何より重要になる。
この事件を受けて翌17日、全日遊連は青松理事長名で「ホール駐車場で車内放置の乳児死亡を受け 子供事故防止対策の徹底について」と題する緊急通達を出した。ちなみに、車内放置の事故は5年連続で発生している。
同友会もこの事件でさっそく動いた。
同友会の車内放置防止の新たなポスターは一歩踏み込んだ内容で、万一、車内に取り残されている子供を発見し、緊急性が高いとスタッフが判断した場合は、「人命救助を最優先し、窓ガラスを割るなどの手段で救出作業を行う場合がある」旨を明示している。
駐車場の巡回時間も全日遊連が最低1時間に1回に対して、同友会は30分に1回、と小まめな巡回実施を基本としている。
巡回するときの装備も全日遊連はスモークガラス対策として懐中電灯の携行を呼びかけているが、同友会は緊急時に窓ガラスを割るために、ハンマーとガムテープの携行が必須となっている。
同友会は車内放置を発見した場合の対応マニュアルも作成している。
■ケース1
子供を発見して反応がない場合
1.子供への呼びかけを続けると共に、即、その時店舗にいる最高責任者に報告し、110番通報を行う。
※救出のための応援(スタッフ・近くにいるお客様)を求める。
2.110番での指示を仰ぎながら、必要に応じて責任者立会いの下で窓ガラスを割って(下記「救出方法」参照)、救出を行う。
3.救出した子供を涼しい場所へ移すと共に、電話で対処方法を聞きながら処置を行い、救急車の到着を待つ。
■ケース2
反応がある場合
1.子供の様子を見守りながらその時店舗にいる最高責任者に連絡※定期的に声を掛け、万一反応が無くなったら上の手順に移る。
2.ホール内のマイク放送でナンバー、車名(色を含む)を繰り返し放送し、当事者のカウンターへの呼び出しを行う。
※当事者が現れた場合、厳重注意を行った上で退店を促し、必ず退店をスタッフが確認する!
3.10分以上放送を続けてもお客様が名乗り出ない場合、責任者の判断の元、エリア長への報告と110番通報を行う。
■閉ざされた車内からの救出方法
・まず全てのドア(前後ドア、リアゲート)のロックを確認し、開いているドアがあればそこから進入する。
・全てのドアがロックされ、窓にも隙間が無い場合、放置されている子供から最も遠いドアのガラスを割る。
・ガラスを割る場合、ガラスの端(角)を叩くと効果的に割ることが出来ます。ガラスの飛び散りを防ぐ為にまずガムテープで割る場所とその周囲を覆った上で、店舗備え付けの緊急時脱出用ハンマーで、ガラスを割ります。
・割った後は速やかにドアロックを開錠し、子供を救出して下さい。
以上
全日遊連は車内放置を発見することに重点を置いているが、同友会は発見した後の救出方法まで踏み込んでいる。
車内放置事故を防ぐには、やはり子供連れの車を入れないことが一番だが、駐車場が一カ所でない、駐車場の入口が何カ所もあるケースもある。
かつてプリペイドカードは健全化のためのコスト、といわれていたが、駐車場警備は新たな健全化のコストだ。
車内放置事故を防ぐにはある程度のコストをかけるしかない。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。