パチンコ日報

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チョコザップをヒントにしたホールの会員向けサービスの幻想

ホール経営の未来に危機感を持つオーナーたちは、様々な業態との融合を模索している。そんな中、ある中堅ホールのオーナーが、テレビで流れていたチョコザップのCMに目を奪われた。

そこでは、ジムの中にカラオケがあり、ゴルフ練習場があり、さらにはランドリーまで備えられているという、まさに「ついでに何でもできる」空間としてのジムが紹介されていた。


「そうだ、うちもこれだ!」

オーナーは独りごちた。そして思いついたのが、「ホールの会員向けサービスとして、コインランドリーを無料で使えるようにすれば、集客につながるのではないか?」というアイデアだった。

次に出店する予定のホールには、コインランドリーを併設し、会員カードを利用して20時間以上の遊技を行った顧客にはランドリーの利用を無料とする特典を付ける。さらに、その洗濯の待ち時間に遊技をしてもらえれば、自然と稼働時間も増える。まさに一石二鳥だ、と自身のアイデアに酔いしれた。

しかし、この構想には重大な欠点がある。

まず、パチンコユーザーとコインランドリーの利用者層がどの程度重なっているかという視点が、完全に欠落している。

スポーツジムに通う層と、パチンコホールに通う層は、ライフスタイルも目的意識も異なる。ジムの会員は「健康」や「美容」、「効率性」といった価値を重視していて、ついでに洗濯や趣味的要素もこなせるという利便性に魅力を感じる。

一方、パチンコユーザーは「射幸心」、「金儲け」に価値を見出している。そこにランドリーのような生活必需的要素を絡めたとしても、ニーズは感じられない。

実際、今から25年以上も前、パチンコ業界誌で「ホール駐車場の有効活用」をテーマとした特集が組まれたことがある。当時、サイドビジネスとしてコインランドリーやコイン洗車場の導入が紹介された。

今それが業界の主流となっているかといえば、答えは否である。大多数のホールでそのような設備を見ることもない。つまり、パチンコ客とランドリー需要の間には、明確なミスマッチが存在することの理由でもある。

さらに、「20時間遊技で無料」という条件も、頻度の高いヘビーユーザーには恩恵があるが、ライトユーザーには無縁であり、新規顧客の開拓にはつながりにくい。

そもそも、こうしたアイデアが浮かぶ背景には、現在のホールの客層や稼働状況に対する根本的な分析の不足がある。自店の顧客はどのような層で、どのような時間帯に来店し、どんな動機で遊技を行っているのか。その実態を把握せずに、ただ他業種の成功例を思い付きで真似することは、まさに絵に描いた餅にすぎない。

ジムのような複合型施設に見られる「相乗効果」は、業種間の顧客ニーズが明確に連動しているからこそ成立する。ホールも、単なる娯楽の場から脱却しようとする気持ちは評価できるが、設備投資の無駄に終わるというもの。

まずやるべきは、自店の足元を見つめ直すことだ。現場に立ち、顧客の声を拾い、データを蓄積し、課題と可能性を洗い出す。その上で、顧客ニーズにマッチしたサービスを提供することが、本当の意味での差別化であり、未来への投資なのである。



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