特に話し好きの常連客にとっては、誰かと会って会話することが、ホールへ足を運ぶ理由の一つになっている。
ところが最近、その常連たちから、ある設備に対して不満の声が聞かれるようになってきた。それは「分煙ボード」だった。
分煙ボードはもともと、タバコの煙を隣に飛ばさないための設備として導入された。しかし、健康増進法で全国のパチンコ店が全面禁煙になったことで、その役目を終えたと思われていた。
ところが、コロナ禍でこのボードは再び注目を集めることになる。飛沫感染を防ぐ手段として、「飛沫防止ボード」としての役割を担うようになり、復活劇を遂げることとなる。
感染対策が求められた時期には、黙食が推奨されたように、黙って打つことが当たり前になり、客同士の会話も控えられていた。
いまや新型コロナが「5類感染症」に移行して2年が経つ。食事の場でも普通に会話が交わされている。そんな中、ホールだけが「コロナ対策」を引きずっているようにも見える。
実際、「ボードがあると話しかけづらい」「声が通りにくい」といった声が、高齢の常連客から聞こえてくる。とくに固定式の分煙ボードは外すこともできず、存在感が強いため、会話の妨げになりやすい。
ホールによっては、パチンココーナーには分煙ボードがずらりと並んでいるのに、スロットコーナーにはほとんど設置されていないという不思議な状況も見られる。これは島の形状や台の間隔といった物理的な事情もあるかもしれないが、スロットの主なユーザー層が若年層で、もともと黙々と打つスタイルが多いことも関係していそうだ。
では、なぜホールは分煙ボードをそのままにしているのだろうか。感染対策の「名残り」として、安全を優先しているという見方もあるし、撤去する手間や費用が惜しいという事情もあるだろう。しかし、いま必要なのは「過去の延長」ではなく、「いまの客がどう感じているか」という視点ではないだろうか。
ホールにとって何より大切なのは、客が快適に、楽しく過ごせること。特に、地元の常連客が通う店であればあるほど、その空気感や人間関係は集客力に直結する。せっかく顔見知りが隣に座っても、話がしにくいとなれば、客足にもじわじわと影響が出かねない。
分煙ボードが必要とされた時期は確かにあった。しかし、その役目はもう十分果たしたのではないか。常連さんたちの「またあの店で友達と話したい」という声を大切にするなら、そろそろ分煙ボードに「お疲れさま」と声をかけてあげてもいい頃合いだろう。

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