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パチンコを打ちたくなるロゴマークの行方

あるデザイナーの下に、一つの案件が舞い込んだ。あるパチンコホールのオーナーからの依頼で、「ロゴを見ただけでパチンコを打ちたくなるロゴを作成してほしい」というものだった。条件は単純明快で、そのロゴをオーナーが気に入れば、報酬として100万円が支払われるという。

ロゴマークのデザインで100万円というのは、決して悪い話ではない。しかし、デザイナーには一つ大きな問題があった。それは、彼がこれまでの人生で一度もパチンコ店に足を踏み入れたことがなく、パチンコに関する知識がまったくないということだった。当然ながら、パチンコユーザーの心理もまったく理解していない。

しかし、ロゴマークというものは単なるデザインではなく、人の行動を誘導する力を持つことがある。これは認知心理学の領域に関わる話である。

人間は何かに対面したとき、目や耳などの五感を通じて情報を受け取り、それを脳で処理することでその対象を認識する。この外界にあるものを知覚し、理解し、状況を把握する働きを「認知」という。そして、認知心理学とは人間の認知の過程、すなわち情報処理の仕組みを研究する学問である。

特に視覚情報は、人間の認知において非常に大きな役割を果たす。ロゴマークや看板のデザインは、視覚的に繰り返し接触することで無意識のうちに認知され、購買行動を促進する効果を持つことがある。

この認知心理学の代表的な成功例として、マクドナルドの「M」の黄色いロゴマークが挙げられる。このロゴを目にするだけで、無意識のうちにハンバーガーを食べたくなる人は少なくない。これは、長年にわたるブランド戦略とマーケティングによって培われた心理的影響によるものである。

では、パチンコを打ちたくなるロゴマークを作ることは可能なのか。結論から言えば、それはほぼ不可能に近いと言わざるを得ない。

デザイナーはこの依頼を受けた直後、まずパチンコ店の外観や看板、広告などを調査した。しかし、これだけで「打ちたくなる」と感じる要素は見当たらなかった。

また、実際のパチンコユーザーの行動心理についても調べたところ、彼らがホールに足を運ぶ理由の大半は「勝てるかもしれない」という期待値であることが分かった。この期待値をロゴマークだけで直接表すのは難しい。

さらに、デザイナーは「パチンコを打ちたくなるロゴマーク」というものが本当に存在するのなら、すでに日本中のホールで使われているはずだと考えた。もし本当にそのようなロゴが存在するならば、それを採用した店舗は確実に集客力を増し、大手チェーンなどがこぞって真似たものを導入しているはずだ。しかし、現実にはそのようなロゴは存在していない。

パチンコを打ちたくなるロゴマークを作ることが難しい理由の一つは、パチンコの魅力がロゴだけで伝えられるものではないという点にある。パチンコユーザーは、台の演出、スペック、店の雰囲気など、さまざまな要素に惹かれて遊技をする。ロゴマーク単体でそのすべてを伝え、しかも打ちたいという欲求を引き起こすのは至難の業である。

では、デザイナーにできることは何か。それは、パチンコの「楽しさ」や「興奮感」を象徴するビジュアルを作ることだ。例えば、大当たりの瞬間を想起させる「777」や「V」、玉が弾けるエフェクト、派手な色彩などを取り入れることで、視覚的にパチンコの魅力を訴求することは可能かもしれない。

しかし、それが「打ちたくなる」決定打となるかは別問題である。

結局、デザイナーは試行錯誤を重ねながらも、明確な正解を見出せないまま、依頼を断ることになった。100万円のチャンスは消えたが、彼にとっては価値ある経験となった。



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