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店長の乱と営業本部長の決断

営業本部長職のAさんは、ここ1年ほど転職について悩み続けていた。その最大の理由は、現職のホール企業のオーナーの気持ちの変化にあった。かつては日々ホールの数字に一喜一憂し、設備投資にも熱心だったオーナーが、最近はホール経営に対する情熱を明らかに失っていたからだ。

そのような最中、別のホール企業から営業本部長職での転職の打診があった。魅力的なオファーではあったが、Aさんが即断できなかったのには理由がある。提示された年俸が、現在よりも約200万円下がる条件だったからだ。責任あるポジションとはいえ簡単に決断できなかった。

結果的に誘いを受けていたホール企業へ今年に入って転職することにした。

1年ほど前から誘いを受けていた理由は、転職先の営業本部長が不在となり、Aさんに白羽の矢が立っていた。入社して、営業本部長のポストが空席になった理由をAさんは知ることとなる。

前任の営業本部長は、社内で「アラ探しの名人」と陰口を叩かれる存在だった。特にクリンネスに対して異様なまでの執着を見せていた。臨店の際には、ホール内のわずかな汚れも見逃さず、写真に撮ってオーナーに報告。ときには担当者をその場で厳しく叱責し、店内の空気を重苦しくしていた。現場スタッフは彼の訪問を恐れ、警戒していた。

事件が起きたのは、週末の繁忙日にその営業本部長が突然臨店した時のことだった。彼はホールの片隅にある汚れに目を留め、主任にモップでの清掃を指示していた。その現場に、たまたま通りかかった店長が遭遇した。

普段から営業本部長の態度に強い不満を持っていた店長は、主任に掃除させていたことで、その瞬間に堪忍袋の緒が切れた。彼はスマホの録音機能を起動し、怒りを露にこう言い放った。

「いきなりこんな忙しい時間帯に来て、アラ探しなんかしないで、お前がやれよ!」

タメ口で感情的な言葉だったが、これは店長の計算に基づいた“芝居”でもあった。録音を通じてオーナーに現場の声を届ける意図があった。

「本社から来ているのなら、あなたが背中を見せてやるのなら分かるが、ただアラ探しで頭ごなしに言われたら、みんな切れますよ」

さらにこう畳み掛けた。

「あなたは自分の子供に自分の仕事をどう伝えているんですか? いつも従業員に掃除しろと言って威張ってる、と言うんですか?」と締めくくった。

店長の乱だった。

この録音を聞いたオーナーは、大いに動揺した。営業本部長を取るのか、現場で奮闘する店長を取るのか——二者択一の決断を迫られることとなった。最終的にオーナーが下した判断は、店長の支持だった。

「現場の声を聞かず、営業本部長の報告だけを鵜呑みにしていた私が間違っていた」とオーナーは頭を下げた。こうして営業本部長は退職することとなった。

入社早々、この店長の“乱”を聞かされたAさんは、現場に情熱を注ぐ気概のある店長がいることに俄然やる気が出た。自らが加わることで、この組織をさらによい方向へ導けるのではないかという思いが湧いてきた。

あるホール企業では、掃除を幹部の役割として明確に位置づけている。店舗だけでなく、駐車場の草むしりまでも幹部が率先して行い、現場と一体となった運営を目指している。作業の際は全員お揃いのツナギを着用し、上司が率先垂範することで模範を示し周囲にもいい影響を及ぼしている。



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