パチンコ歴は60年以上になるAさんのホール通いが最近パタリと止まった。月1万円は負けないぐらい金額。それぐらいならまだまだ続けられるような金額だったが、2万円近く負けるようになったことに加え、マイホールの顔なじみが「新たな遊び」に嵌ったことが、パチンコを止めた理由だった。
その新しい遊びとは…
チェスだった。
囲碁・将棋なら誰か経験者がいて腕前に差が出るものだが、チェスは全員が初心者なのでレベルは横一線からのスタートだった。
公民館がチェス会場で、現在のチェス仲間は総勢16人。うち半数の8人がAさんのパチンコ仲間だった。
Aさんのような高齢者をチェスの虜にさせてしまったのは、チェスを手ほどきしてくれた先生にあった。パチンコ仲間の娘さんがチェスの先生なのだが、33歳で美人ときている。おじいちゃんたちのスケベ心がチェスへと向かわせた。先生は一緒にチェスをしてくれる仲間が欲しかった。
「パチンコはただ打つだけだったが、チェスは頭と手を使う。パチンコよりもチェスの方が面白くなったので、パチンコへ行く回数がどんどん減った。パチンコへ行くのは顔見知りの仲間へ『元気?』とあいさつに行く場所だったことに気づいた。年金生活も厳しくなる年寄りが今後も増える。パチンコはどうしてもおカネがかかるが、チェスならおカネもかからない」(Aさん)
こうして、Aさんはホール通いを止めてしまった。さらに、改めて気づいたことはこうだ。
「パチンコをやりたくてやっていたのではなく、自分が行かないと常連客が心配するから行っていたようなもの。パチンコが好きでやっていたのではなく、やることがないのでパチンコ店へ行っていた」(同)
Aさんの1カ月に使う金額が1万円程度だったことでも、ヘビーユーザーではないことが分かる。健全なパチンコライフを送っていたのに、ホール以外で、チェスという共通のコミュニティーができると、皆でそちらへ移動してしまったということだ。
ホールがお年寄りのコミュニティーの場になっていたことが改めて浮き彫りになる。
Aさんの地区では灯油を配達してもらうと18リッターで2600円。昼間は公民館でエアコンの温度を上げてポカポカ。灯油代の節約にもなっている。ホールも夏は涼しく、冬は暖かいが、それなりにパチンコ代もかかっていた。つまり、ただではなかった。この差も大きい。

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