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コロナ逆境を跳ね返した星野リゾートに学ぶ

コロナ禍でパチンコ業界以上に窮地に立たされたのが宿泊業だろう。インバウンド目当てで建築したホテルが倒産・閉鎖に追い込まれたのは記憶に新しい。大阪・ナンバの遊技機販社跡地にオープンしたばかりの「ホテルWBF なんば元町」もその一つ。親会社のWBFホテル&リゾーツ株式会社が2020年4月に民事再生手続きに出たためで、負債総額約160億円はホテル業界では最大だった。


コロナ逆境を乗り越えてきたのが星野リゾート (星野佳路社長)だ。WBFホテルの再生スポンサーとして星野リゾートが現在運営している。

宿泊業界がズタボロになる中、どうして乗り越えられたのかというと、フラットな組織づくりがそこにはあったからだ。フラットな組織を一言で表すと、トップの決断でも却下される変な組織でもある。

星野リゾートがまだ星野温泉時代の30年以上前は採用に苦労した。長野県にある無名の旅館に加え、観光ホテルでは年末年始、土曜祝日が休めない。同じ地域にある工場で働いた方が休みもあるし、給料も高かった。

星野佳路氏が4代目社長に就任したのは1991年。まず着手したことが社員の手で最高のチームを作ることだった。

星野リゾートの組織力は「エンパワーメント」とも呼ばれている。エンパワーとはやる気のある社員のことで、やる気を出させるためには、経営情報、意思決定の公開が第一ステップだった。

先代の星野温泉時代は、父である社長の意思決定の下に社員にやってもらうパターンで、やる気のない社員の責任は本人にあった。

経営を引き継いだ時代は、「やる気のない社員の責任は経営者にある」という時代に替わっていた。経営者の役割は社員のやる気を出させることに替わっていた。そこで星野社長はスタッフのモチベーションを高め、良いチームを作って、働きやすい環境を整え、そして、経営の実績を出していくことから始めた。

宿泊業のトップは総支配人であるが、決定権があるから偉いのではない、というのが星野社長の考えだ。

正しい経営判断ができるまで、フラットな組織で正しい議論をすることが、正しい判断をする確率が上がる、と考えている。これが星野リゾートの文化にもなっている「フラットな組織」だ。

フラットな組織とは職責やポジションに関係なく議論できることだ。言いたいことを言いたい人に直接言えるコミュニケーションスタイルだ。

フラット組織で大事なことは、「偉い人信号」をなくすことだ。

どういうことかというと、部長のデスクは一般社員よりデカイとか、総支配人は個室のオフィスを持っているとか、社長は運転手付きの社用車に乗っているとか、取締役以上はビジネスクラスに乗るとか、そういうのが偉い人信号だ。

この偉い人信号がある限りフラットな人間関係にはなれない。それを実践するかのように星野社長には社長室もなければ、社用車もない。

星野リゾートが再生案件に入る時は、まず、総支配人の個室を撤廃するところからスタートする。

ただ、体が疲れる海外出張ではビジネスクラスは、20%の自己負担で誰でも乗ることができる。これがフラットな組織の神髄とも言える。

フラットな人間関係ができると面白い現象が起きる。舘山寺温泉の「花乃井」の再生を果たした時、記念の集合写真で総支配人がどこにいるか分からない。普通は前列に真ん中が定位置だが、組織がフラットになるとそんな慣習もなくなる。

フラットな組織では組織図は逆ピラミッドになる。一番上がスタッフで、自分の頭で考え、自分で行動する。これがエンパーメント=やる気のある社員を作ることにつながる。

やる気を引き出すためには経営情報の共有がある。総支配人が会社について沢山の情報を持っていると議論がフェアではない。一般の会社では中間管理職のステイタスを維持するために情報量の格差をつけることはよくあることだ。

星野リゾートでは経営情報を共有して議論することが一番いいことだ、と捉えている。

星野リゾートで物事を判断するために、顧客満足度アンケートが肝になっている。ここを徹底的に調査して完全に共有している。これが星野リゾートの強味だ。

方法はサンキューメールを送り、アンケートの回収率を高めている。部屋にアンケートを置いているだけでは、すごく感動した人か、凄く不満があって怒っている人で、この2つからしか返事が返ってこない。

星野リゾートは中間層の意見が大事なので、総支配人に対しては、唯一アンケートの回収率の目標設定をしている。回収率を高めることが正しい満足度結果につながるからだ。

正しい満足度結果をタイムリーにスタッフに共有することが正しい議論につながる。ネガティブなアンケート結果も日々全員が見ることができる。不満層をクリックするとどういうコメントをしているかが見られる。それによってスタッフは自分の施設がどういう状態に置かれているかを把握することができる。

2020年3月25日、小池都知事がオーバーシュート発言した時、優先順位の組み換えを行った。コロナ環境での基本3大方針は、次の3つ。

① 現金を掴み離さない
② 人材を維持し、復活に備える
③ CS・ブランド戦略の順位を下げる

現在、観光業界は人材不足に陥って大騒ぎしている。それはコロナ禍で人材を切ることを容認したケースで人材不足が起こっている。

おカネはすぐに借りることができても、人材は借りるわけにはいかない。育てるまでにまた30年かかる。だから人材を維持して乗り越えることが復活を早めることになるので、優先順位の2番目にした。

CSを犠牲にすることは4月に決断した。CSに拘るのを止めるとコスト削減のアイデアも沢山出たが、CSそのものはそんなに下がっていない。そういう意思決定をしたことで効果が上がったことがポイントになっている。

危機はブランド力を捨ててでも乗り越えなければいけない。危機対応としては雇用調整助成金で固定費を下げたことで、採算分岐を下げ、集客数を低く設定することができた。

県をまたいでの旅行が規制されたが、車で1~2時間で移動できるマイクロツーリズムは日本全国で需要がある。マイクロツーリズム=危機を乗り越えるためにやることが明確になった。

ご近所旅行のおススメをスタッフが模索した。近場の情報発信は地方のタウン誌を安く活用できた。県民割がマイクロツーリズムを政策的にサポートしてくれた。旅行需要はだいぶ回復してきた。

星野社長の仕事は方針決定で、それを実践するのが現場の試行錯誤と創意工夫である。それができるのはフラットな組織を徹底した結果だった。

以上

フラットな組織づくりはなかなか容易ではないだろうが、困難なことに早くから着手した組織があったからこそ、この難局を乗り越えることができた。最終的にものを言うのは人間力である。

業界を見渡すとフラットな組織とは対極にある。トップの顔色を伺いながら自由にものが言えないから活発な議論も生まれてこない。



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