それを隣の席で打っていた爺さんが「俺が2万円入れたのに」「300回ぐらい回したのに」と煩く絡んできた。
「ごめんね。1000円で当たっちゃって」と軽くかわしたが、食事代や電車賃をたかってきたので、爺さんのカードに1000発分を入れてやった。するとその爺さんも万発出すことになったが、1000発分返すとも言わない。
翌日もそのホールへ行くと、爺さんも来ていた。
「昨日は3万発も出たよ」というだけでお礼もない。
打っているとその爺さんが缶コーヒーを買って差し入れてくれた。1000発もやったのに缶コーヒー1本かと内心腹が立った。その爺さんはマクドナルドのビーフシチューパイを食べながらマクドナルドのコーヒーを飲んでいるのが余計腹立たしかった。
「昨日は2万円以上負けたが、あれから5万円以上勝った。お兄ちゃんのお陰で30年以上ぶりに吉原のソープへ行ってきたよ。自分のおカネで稼いだカネじゃないから散財しちゃったよ」と自慢げに話す。
よく、話を聞いていると爺さんはその昔、ホールの店長をやっていた、という。パチンコ代は息子に貰っていることが分かった。
しかも、息子は、跡取りがいないホールオーナーの娘と結婚して、今は10店舗以上運営するチェーン店の社長に収まっている。
「今のパチンコは自分が店長をやっていた時代とは全然違う。コンピュータの確率なので勝つか負けるかは運次第。昨日はお兄ちゃんに玉を貰ってついていた。いいソープ嬢にも当たり本当に良かった。次はいつソープへ行けるか分からないよ」
年の割には性欲が旺盛な爺さんだった。
この爺さんはこの20年余りのパチンコの収支決算を毎日つけている、という。この間の負けは1億円以上。年間なら500万円も負けていることになる。そのカネも息子から貰っている小遣いか?
で、息子の会社は利益を上げているというのだが、その手法が定点観測でいくら負けていくら勝ったか。どのぐらい負けが込んだら来なくなるか、というギリギリのラインを把握している様子だ。
年末に閉め過ぎたホールには、客は正月には足を運ばないでガラガラになることは、よくあるケースだ。そんな状況をバカ出しもしないで放置しているから、運営が下手くそなホールはどんどん稼働が下がり、閉店に追い込まれていく。今、稼働が低迷しているホールは、取ることばかりに専念し過ぎているからそんなことになる。

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