地方で夫婦が働くホールの職場体験をしてみたい、と子供が希望した。親がどんな仕事をしているのか、素直に知りたいと思ったからだ。
ところが、パチンコ店は法令で18歳未満は立ち入りが禁止されている。いくら職場体験と言えども中学生は入れない。自分たちが働いている姿を見せられないことに、風俗営業であることを実感した。子供は親が働いている姿を見ることもできないことにショックを隠し切れなかった。
そこで夫婦はオーナーに直談判した。学校の授業とは別に休業日の店舗で模擬体験をさせてもらえないか、と懇願した。
オーナーは夫婦の熱意に押され、所轄に相談に行った。
ところが、所轄は「前例がないから判断できない」としながらも、営業時間外であっても未成年の立ち入り禁止は崩さなかった。
夫婦は「パチンコという仕事にプライドを持っているので、仕事しているところを堂々と見てもらいたかった」と悔しさを滲ませる。
風俗営業の枠に縛られているパチンコホールの職場体験は、今後も可能性はないのだろうか?
2016年の改正風営法で「客にダンスをさせる営業」については、ダンス文化の健全な発展の支障とならないよう、風俗営業から除外された。ダンスホールが風営法で取り締まられるようになったのは、戦後、ダンスホールが売春の温床となっていた時代があったからだ。古い慣習のままに、長らくダンスホールは風営法の枠にはめられていたが、実態とそぐわなくなっていた。
パチンコも風営法から外して、パチンコ業法の制定を目指した時期もあったが、そうした動きも霧散して行った。
「くぎ曲げや不正サブ基板など不正行為をしなければ、成り立たない営業を続けているようでは風営法の枠から外れることはない。風俗営業者の自覚を持っていたら、職場体験の発想自体も起こらないのでは?」(業界関係者)という声もある。
かつて、マルハンがモデル店構想で業界改革に乗り出した理由の一つに昔のパチンコ店の従業員はローンも組めなければ、マンションも借りられない、という社会的地位が低かったことへの反骨精神だ。大卒の新卒を採用し、業界イメージを改革し、ホール従業員の社会的地位向上を目指すためであった。
さしずめ、次の改革は子供の職場体験ができる業界に変えて行くことだろうか。

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