Aさんの前職は全国大手ホールだった。就活では一般業種もあたったが内定をもらったのはホール企業6社のみだった。
全国大手2社に地元関西の中堅ホール4社の中から、業界内でも優良企業との評判が高い全国大手を選択した。しかし、Aさんは1年も経たずに辞めてしまった。
「自分で言うのもなんですが、あまり業界研究はしていませんでした。これは反省材料ですが、入社すると先輩が転職の話をしているのが漏れ伝わってきて、ヤバイ業界に就職してしまったな、と思うようになりました」(Aさん)
昨年夏、遊技機規則の改正で出玉が3分の2問題で業界が揺れ動いている時に、Aさんの気持ちもぐらつき始めた。
有効求人倍率も高い時期で、今が転職のチャンスと考えたAさんはすぐに行動に移した。
「大学時代私自身あまり勉強していませんでしたが、同期は私のようなレベルばかりで、優秀な同期はいませんでした。4円の稼働がヤバイということはやはり経営的にも今後厳しくなるのではないでしょうか。1パチのお客さんは高齢者ばかりで30年先の業界が想像できませんでした。パチンコ業界より運送業界の方が将来性がある、と判断しました」(同)
かつてはパチンコ好きがホール企業に就職したものだが、最近はパチンコを打ったこともない学生がホール企業を選択する傾向がある。Aさんもさほど業界研究もしないで就職したものだから、すぐに夢を打ち砕かれてしまったが、夢が描ける業界にしなければ、今後の新卒採用はさらに厳しくなってくるものと思われる。
ダイナミックな業界で店長でも億単位のおカネを動かせるのが、パチンコ業界の魅力だったはずだが、店長の決裁権も5万円、10万円の世界になってしまった。
隣の芝生は青く見えるものだが、情報機器メーカー大手が営業体制や生産体制の統廃合に伴い国内外で1万人のリストラを発表した。
対象は役職のない若者や役職があっても仕事をしない中間管理職だ。この中には実家がホールを経営している30代の社員がいた。リストラされても家業を継げばいいと思われていたが、すでに廃業していて帰る場所もなくなっていた。息子が継ぐ気がないと分かった時点で自分の代で終わらせる決意をしていたようだ。
夢のない業界には人材は集まらない。夢のある業界にするにはどうすべきか。まずは大衆娯楽の原点に立ち返る努力から始めれば、答えは自ずと見えてくるはずだ。

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