空くのを待っていると、60代のおじさんが声を掛けてきた。
「ここは俺が来た時から止まっている。かれこれ、30分以上経っているけど、取に来ないよ。お兄さん、これ出しちゃいなよ」
「いいえ、他人のものには触りたくないので、待ちます」
「じゃ、俺が出してやるよ」
「いや、結構ですよ。後でトラブルになるのも困りますし」
おじさんはそんな声を無視して、中のものをどんどん取り出し始めた。
「ここ、使っちゃいな」
もう、取り出されたので、仕方なく乾燥機に入れ、タイマーをセットして外に出た。
悪い予感は当たった。
コインランドリーに戻ると洗濯物を取り出された主が待っていた。30代の昔ヤンキーだったことを彷彿とさせる家族連れで、奥さんと子供は車の中にいた。
「あの~、うちの洗濯物出しましたよね」と凄んできた。
「出してないよ」
「でもお宅の洗濯物が入ってるじゃないの。うちのを出したから入れたんだろ」
「俺が出したんじゃないよ」
事情を手短に話したが、相手は納得しない。
「他人に洗濯物触られるのは嫌なんで、また、洗い直してるんだよね。また、乾燥機に入れると1000円はかかるんだけど」と暗におカネを要求してきた。
「だから、俺が出したんじゃないって。防犯カメラを見てみなよ」と強気に出ると、「お願いしますよ。1000円を出してよ」とお願い口調にはなったが1000円の要求は止めようとしない。
埒が明かないので110番通報した。5分ほどでパトカーが到着した。警察官に事情を話した。
30代の男に対して「この人が出した証拠はない。おカネを要求すると犯罪になりますよ」と諭した。
110番通報した人には、洗濯物を出した人の風体などを尋問した後でこういった。
「勝手に出していいか、悪いかの明確なルールはない。でも、中には女性物の下着だってある。だから、触らない方がいい。あなたも使わなかった方が良かった」
警察の仲裁でその場は終わった。
本題はここからだ。
この人は数年前、パチンコ店で似たような経験をしている。
スロットを打っている時だった。下皿が一杯で箱には1/3ほどコインが入っている状態の時だった。背後から背中を掴まれた。
「ここにコインがあったと思うんだけど。オレのコインを使って出してるんじゃねえだろうな」
「コインなんかなかったよ」
「100枚ぐらいは置いていたのに、おかしいじゃねえか」
「ボケた爺さんや婆さんじゃあるまいし、100枚の置いてあったら打つわけがないだろ!」
店員を呼び出した。
事情が分かった。
客は食事休憩に出たまま、時間が過ぎても帰って来なかった。店は時間が過ぎているので、何度か店内放送で呼び出したが、それでも帰って来なかったので、店がコインを撤収していたのだ。
コインランドリーでもそうだが、とんだとばっちりだった。
何ら落ちのない話だが、コインランドリーでは他人の洗濯物は触らない、ということだ。

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